コラム

こんなに違うの?!アジア・欧州5か国の「働き方」を日本と比べてみた


長時間残業や過労死が問題視され、「働きすぎ」と言われる日本人。政府による働き方改革が動き始めていますが、どのような成果が出るのかはまだまだ未知数です。エクスペディア・ジャパンによる「世界30ヶ国 有給休暇・国際比較調査2017」でも、有給休暇消化率は50%と2年連続最下位と悲しい結果に。それではヨーロッパやアジアでは実際どんな働き方をしているのでしょうか?世界各国の働き方事情を調べてみました。

【ドイツ】サービス残業はもちろんあります

ヨーロッパの中でも、日本人と国民性が近いイメージがあるドイツ人。比較的真面目で、きちっとした仕事が好き、といった感じでしょうか。それでも、日本と異なり残業はなく、それでいて経済が好調だと言われています。はたしてそれは本当なのでしょうか。

フリーライターの雨宮紫苑さんの著書『日本人とドイツ人―比べてみたらどっちもどっち―』によると、連邦労働安全衛生研究所(Bundesanstalt für Arbeitsschutz und Arbeitsmedizin / BAuA)の統計では、約5人に1人は週48時間以上働いていることとなり、なかには賃金が支払われていない残業もあるのだとか。日本人がイメージしている「残業はない」が本当ではないことがわかります。出世をしたければ、積極的に残業もしているのです。

ただ、日本と大きく異なる労働制度に、「労働時間貯蓄制度」があります。今日1時間残業したら、翌日は1時間早く帰るといった調整ができる制度です。サービス残業をするとはいえ、自分の主張はしっかりとするドイツ人。日本のように周りの雰囲気を見て早く帰れないといったことがないからこそ、「労働時間貯蓄制度」が機能していると言えます。

【イタリア】始業は遅め。その分、集中してパワフルに仕事をこなす

陽気なラテンの気質を持っているイメージがあるイタリア人。優れたセンスで、より感覚的に仕事を進めていくイメージがあります。そんなイタリア人の働き方は、やはりプライベート、家族や恋人との時間を大切にし、ダラダラと残業はしません。
朝のコーヒーを飲んでいて始業が遅れるといった、日本人から見たイタリア人のイメージを裏切らない習慣もありますし、ランチタイムは2−3時間取り、家に帰って家族で食事を楽しむといった習慣もあります(地域によって異なります)。

では、仕事も陽気でほどほどに進めていくのかと思いきや、そうでもないようです。工業デザイナーの奥山清行さんの著書『フェラーリと鉄瓶』によると、仕事をするとなると集中し、かなりモーレツに働きはじめるのだとか。追い込まれると本気になるタイプなのかもしれません。

【フランス】現場系もホワイトカラーも、実際には残業をしている

フランス人の働き方を語る上で、切っても切り離せないのが「バカンス」。フランスでは有給休暇が年5週間あるため、多くの人が8月の1週間~1ヶ月程度を休みにあてて、旅行などに出かけます。最近は、数日ずつ細切れに取得する人も増えているようですが、それでもバカンスのために仕事をしているといっても過言ではない人はいます。
バカンスの習慣があるため、仕事が途中で止まるのもお互い様。たとえバカンス前に取りかかっていた仕事が終わらなくても、しっかり休みは取得します。休み中に、他の人に仕事をお願いしたり、仕事のことで連絡が入ったりすることはほとんどありません。そうした意味では心置きなくバケーションを楽しめそう。日本人の私たちからするとうらやましい限りです。

またフランスでは労働時間が週35時間と決まっているため、日本人よりも働かないイメージもあるでしょう。とはいえ観光立国のフランス、特にパリでホテルや飲食店などのサービス業に従事する人たちの間では12時間労働、サービス残業などはかなり当たり前にあるようです。
加えて、管理職クラスになれば成果が求められるので、本人たちにサービス残業をしている意識があるかないかはともかく、ある程度の長時間労働は免れないようです。

Businessman doing presentation to colleagues in front of blackboard with notes and diagrams

【中国】年平均労働時間が日本よりも多い

仕事とプライベートをきっちりと分け、どちらかといえばプライベートを大切にするヨーロッパに比べ、アジア圏はもう少し仕事の比重が増えます。人口世界一を誇る中国では、巨大な労働力を資本に躍進を続けてきましたが、近年では人手不足も叫ばれています。
あふれるほどの労働人口ゆえに、販売やサービスの現場では接客をあまりせず、ゆるく働いている印象もあるのですが、中国人の年平均労働時間は2000~2200時間(北京師範大学研究員の集計)と、日本の1719時間(パートを含む。同集計)よりも多くなっています。

さらに、中国人の1日当たりの平均自由時間は2.27時間とドイツ、アメリカ、イギリスなどの5時間より圧倒的に少なくなっています(ともに中央電子台と国家統計局による「中国経済生活大調査」から)。
手抜きやいい加減のように見えて、実は合理的に仕事を進め、残業はしたがらないイメージのある中国ですが、実際にはその労働環境には「過労」の実態があるのです。そのためか、中国では転職が盛んで、主に給料や労働環境の待遇に不満があれば、どんどん転職してステップアップを目指します。転職に至る年数も短く、入社後2年以下で新たな職場を探す人も多くいます。
最近では、今後週休3日制を目指す報告書も発表され、改善に期待が持たれていますが、やはり、アジア圏は労働時間が長くなる傾向があるようです。

【シンガポール】転職を繰り返してキャリアアップを目指す

中華系、マレー系、インド系に加え、世界各国の企業が進出し、まさに人種のるつぼのようなシンガポールは、アジア圏でありながら有給休暇取得率93%(2017年エクスペディア・ジャパンの調査より)とワークライフバランスのとれた働き方であることがわかります。
加えてシンガポールには病気の場合に使える「有給病欠」という制度があり、有給休暇とは区別されています。そのため、有給休暇はすべてバカンスに利用できるのです。そう書くとプライベートを重視して、労働時間が短いような印象が出てしまいますが、やはり管理職クラスなど収入の多い人たちはそれなりの仕事量をこなしており、メリハリがついていると言えるでしょう。

こうしたシンガポールの働き方に、もうひとつ特徴を挙げるなら、転職への敷居の低さがあります。転職はキャリアのステップアップになるという風潮があるため、人材は流動的。社会人数年で、すでに2~3回転職している人も少なくありません。
カフェ店員や現場系の従事者の給与の低さといった課題はありますが、周りもそういった人たちへ給与以上の質を求めることがないため、割り切って仕事ができるようです。

職業選択の自由による未来と可能性がある日本

おもにヨーロッパとアジア圏の働き方を紹介しました。ヨーロッパ全般に言えることですが、階級社会である点が働き方に少なからずの影響があると言われています。
例えばフランスは、国のエリート養成機関グランゼコール出身でないと出世は望めません。パン職人や美容師といった「手に職を持つ」仕事は、「学歴が必要ない仕事」とみなされ、その中である程度ステップアップをしても収入や社会的地位が目に見えて高くなるわけではないのです。イタリアも同様に、出身によりある程度のところまでしか上がれないなど、ヨーロッパ特有の社会構造があるのです。
それだけに、仕事に精を出して転職とステップアップを繰り返し、ステータスを上げていくよりも、無駄な残業はせずに現状の中で楽しく暮らしていこうとしているのかもしれません。

一方で日本は、転職が比較的容易です。出身大学による違いは多少なりともあるものの、古くから「職業に貴賤なし」という言葉があるように、明確な階級別の職業というものもありません。フランスなどでは移民の仕事と思われている清掃スタッフやライン作業員であってもプライドをもって感じよく働いている人が多く、フランスからの観光客が驚くこともしばしば。
日本では、転職回数があまりにも多いのは企業からの印象がよくないことではありますが、仕事や職業に対する可能性や未来があるという点では、日本はとても恵まれているのかもしれません。

(文:岡崎たかこ)