転職ノウハウ

なぜ自販機で結婚指輪が売れるのか? ブランドが語るプロポーズリングの新しいニーズ


人生の一大イベントで用いられる結婚指輪。その結婚指輪を自動販売機で購入するなんて、と思う方も少なくないと思いますが、世間では概ね好意的に受け止められているようです。給与何か月分のお金を握りしめて、時に1人で、時に2人でじっくりと選んで、思いきって購入するのが王道とされていた結婚指輪。この購入法に新たな選択肢を生み出したのが、東京・千駄ヶ谷に旗艦店を構えるアクセサリーブランドのJAM HOME MADE。広報の野澤さんに、この斬新なアイディアがどのように生まれたのか聞いてきました。

リアル店舗でも24時間お客様と関われる自動販売機


――まず、一生ものとも言われる結婚指輪を自動販売機というコンビニエンスな媒体で販売した狙いをお聞かせください。

誤解を恐れずに言うなら、一番の大きな狙いは話題性です。とはいえ、自動販売機という販売方法自体は、「実店舗でもネットショップと同じように24時間お客様と関わりたい」という想いを追求しようとした結果、編み出したものです。ネットショップは24時間365日、オンラインで商品の購入が可能です。それをリアルで実現させようとすると、どのような方法があるのかを考えたときに、「そういえば自動販売機なら、24時間いつでも買えるよね」と思いついたのです。いうなれば、ネットとリアルの融合を目指した結果です。

――実際の反応はいかがでしょうか。

やはり意外性、話題性がありメディアで取り上げていただけたことから、2018年3月の設置以降、今でも平均1日1個は売れています。店舗の場所的にも通りがかって気づいて購入されることはほとんどなく、自動販売機の存在を知っていて訪れるお客様が大半です。中には、地方からわざわざ来ていただいた方もいらっしゃいます。

――どんな方が購入されているのでしょうか。

自動販売機ですので、購入されるお客様のすべてを把握してはいないのですが、若いカップルの方々のほか、意外にも30~40代くらいの方がいらっしゃいます。おそらく、接客されるのが気恥ずかしいとか、失敗するかもしれないから対面で購入したくない、店員に勧められるまま高いものを購入してしまいそうで怖いといった方が多いのかなと思っています。購入される時間帯も色々ですが、夜中や朝方の購入もコンスタントにあり、24時間お客様と関わりたいという当初からの想いが実現できていると感じています。

――販売している指輪はどのようなものですか?

当社の人気商品である手づくり指輪キット「名もなき指輪®️」と、本物を送る前にまずは形としてのプロポーズに使っていただける「プロポーズリング」、メッセージを添えて指輪を贈れる「約束の指輪™️」です。

大切なのは体験の共有。自動販売機で購入後、2人でつくる手作り指輪キット

――手づくりの指輪キットはどのような部分がウケているのでしょうか?

こちらの商品は専用の工具と一緒に、成形途中の指輪をパッケージしたもので、指輪は微妙に歪みを残した状態にしてあり、工具を使って木槌で調整して綺麗な円形に整えていきます。市販品と違って世界に1つのオリジナルであること、また2人で一緒に指輪をつくる過程を楽しめ、体験を共有できる点がウケているのでしょう。店舗、オンラインショップ共に人気が高い当ブランドの主力商品となりました。自動販売機用にステンレスの商品を新たに投入しましたが、店舗では銀や真鍮なども販売しています。手ごろな価格帯であることも人気の理由だと思います。

――自動販売機の前には作業台がありますが、実際にここで作業するカップルもいますか?

若いカップルの方々で、作業される方はいらっしゃいます。そういう時は、様子を見て、お手伝いが必要かどうか、お声掛けすることもあります。手づくりの指輪キットには、「PADLOCK(南京錠)」もパッケージしており、指輪をつくっていただいた後、その南京錠を2人の「誓いの錠」として店舗前のフレームにかけていただくこともできます。その一連の体験自体を、楽しんでいただいています。南京錠を見ていただくと、メッセージが書かれているのがわかると思いますが、「結婚できますように」など2人の願いが記されていたりします。結婚されて数年後に再訪されるお客様もいらっしゃるんですよ。

――自動販売機ということで、気軽なイメージがあったのですが、実際には2人で手づくりするという手間をかけてつくり上げる商品だったんですね。

そうですね。近年、モノだけではなく、体験や想いを共有することが重視されてきており、特に東日本大震災以降にそれが顕著になったと思います。結婚式でもそういった傾向があり、参列者と一緒に何かをする演出が増えているそうです。嬉しいことに手づくりの指輪キットを結婚式の参列者の方々に成形していただき、最後に自分たちが木槌を打って指輪を交換するといった演出に使用してくださった新郎新婦もいらっしゃいました。式に参列させていただいたのですが、おじい様が打っているときは感動で涙がでてしまいそうでした。何年経っても、親戚や友人が集まった時に「あのときは~」と話題になりそうですよね。

初めてのペアリングが結婚指輪に再現される

――JAM HOME MADEでは、最初から結婚指輪を扱っていたのですか?

結婚指輪はブランド初期から取り扱っています。元々、「肌に最も近いプロダクト」をコンセプトに立ち上げたブランドで、男性向けのファッション小物などを中心に扱っていますが、「消費されないモノ」=「後世に残るモノ」のひとつとして結婚指輪を取り扱うようになりました。当時は男性のお客様が多かったこともあり、女性向けのキラキラしたイメージではない結婚のスタイルとして、「ブラックブライダル」を提案していました。

――手作りの指輪キットはどのような発想から生まれたのでしょうか。

体験を共有していただくことを考えたときに、「指輪を自分たちでつくれたらいいよね」という発想から、当初は店舗限定で無料のワークショップとして開催していました。その反響がとても大きく、参加者が増えたこと、また、地方の方からもやってみたいというお声があったことから、さらに簡単に作業できるよう改良して、商品化しました。

――手作りの指輪キットは結婚指輪として利用されるほか、カップルが初めてつくるペアリングとしての需要も大きそうですね。

そういった方も多いと思いますし、それも狙いのひとつです。当店では、このペアリングを再現する商品もご用意していて、長年使って付いたキズなどもゴムで型を取ることでそっくりそのまま新しい指輪に吹き替えることができます。例えば、最初のペアリングはステンレスや銀といったものでつくり、結婚へのステージに進まれたお客様には、その時の指輪の形のまま、つまり指輪の歴史はそのままに、あらためてプラチナで指輪を作り直していただくことができます。大切なのは、モノに刻まれた時間や歴史なんだと思います。

「失敗したくない」人がタイミングを逃さずに購入できる自動販売機

――プロポーズリングもとても人気があるそうですね。

これまで、プロポーズの際には、婚約指輪ともなるリングを贈ってきましたが、婚約指輪は高価なもの。しかし、指輪のサイズがわからない、相手の趣味や好みと違っているかもしれない、万が一にもプロポーズを断られるかもしれないといった不安があるものです。

高価な指輪で失敗したくないのが人情というもの。プロポーズ用の手ごろな価格の指輪を用意することで、要となる指輪を差し出しながらのプロポーズを実現し、OKであれば改めて一緒に購入しに行くことができるため、プロポーズリングの需要は高まっています。自動販売機でも本物のダイヤモンドをセットした、金色と銀色の指輪を2つずつ、計4つを販売しているのですが、今年のクリスマス頃には、一晩で売り切れになりました。

また、プロポーズの方法がバラエティに富んだ現代だからこそ、指輪の購入方法もそれに応じていろいろあって良いと思うのです。失敗はしたくないけれど、最高なタイミングで、最高のシチュエーションを演出し、その時間や思い出を共有したいというニーズは高いです。そして、そのタイミングを逃さないよう購入できる方法のひとつが、自動販売機だったのだと思います。

――今後、指輪の自動販売機はほかの場所での展開を考えていますか?

商品の補充など、メンテナンスが必要なので設置拡大はなかなか難しいと思いますが、例えば遊園地の観覧車の近くとか、いわゆるデートスポットや、恋人同士の記念となるようなスポットに設置できると、かなり反応がよいのではないかと考えています。

自動販売機だからこそ、体験と思い出を共有する機会を増やしていけるのではと思います。

 

取材協力 JAM HOME MADE
「肌に最も近いプロダクトをメインに、デザインの本質(思いやりや笑顔)を追求し、提案する」をコンセプトに、アクセサリーブランドとしてスタート。各ブランドとのコラボも多く、根強いファンを持つ。2018年3月に旗艦店を移転してリニューアルオープン。オンラインショップを利用中のお客さまのアバターをリアルタイムで実店舗の壁に投影されるシステムを考案し、リアルとネットの融合を図っている。リニューアルを機に、指輪の自動販売機を設置し、話題となる。
JAM HOME MADE 東京店
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷2-38-2
TEL:03-3478-7113
営業時間:12:00〜19:30
定休日:不定休
http://jamhomemade.com/

(取材・文:岡崎たかこ)