転職ノウハウ

批判はチャンスだ。「テクノ法要」で仏教の魅力を伝える元DJ住職の挑戦


音楽と照明で極楽浄土の世界を表現した「テクノ法要」。これまでの「寺」のイメージを変えるその試みは、日本や世界で大きな話題となりました。今回は、その生みの親であり元DJという異色の経歴を持つ住職、朝倉行宣さんに、テクノ法要誕生の経緯とそこに込められた思いを伺いました。

DJと僧侶、どちらも「素晴らしいものを伝える仕事」という意味では共通している


―まずは経歴について簡単に教えてください。
学生時代は京都に住んでいて、そのころからDJとして働き始めました。クラブ営業とライブハウス営業をしていたお店で、DJと並行して照明のオペレーターとしての仕事もしていました。大学卒業後もしばらくDJを続けていたのですが、25歳のころ、家業であるお寺の仕事を継ぐために音楽の仕事を辞めて実家へ……。それからは、僧侶としての活動をしています。

―DJを辞めて僧侶になることに抵抗はありませんでしたか?
実は以前は「お坊さん」になるのが嫌だと思っていたこともあったんです。でも、DJや照明の仕事をしたことで、僧侶に対する自分のイメージも変わっていました。DJや照明オペレーターは素晴らしい音楽をみんなに届ける仕事で、僧侶は仏様の教えをみんなに伝える仕事。そう思うと、「何か素晴らしいものを伝える仕事」という意味では同じなんですね。それで、「お坊さんっていうのも結構おもしろいんじゃない?」って思い始めていて、すんなりと実家に帰って僧侶になることを受け入れることができました。

テクノ法要とは今の技術で「極楽浄土」を表現したもの。仏教の魅力を伝えるきっかけを作りたい

 

―テクノ法要とはどのようなものか教えてください。

テクノ法要とは、極楽浄土の景色を今の技術を使って表現する試みです。お寺やお仏壇の中って、元々金ピカでしょう?あれも実は1000年前、当時の最高の技術を使って極楽浄土の世界を表現したもの。それで、「どうして今の技術を使わないんだろう?今ならもっとすごいことができるのに」とか「もし今の技術が1000年前にあったとしたら、昔の人はどのように表現しているだろう?」なんて考えるようになったんです。

たまたま僕は音楽が好きで、若いころからDJや照明の仕事をしていたのもあって、以前から自分の中でさまざまなイメージを持っていました。例えば「この照明を仏様の後ろから当てたらきれいだろうなぁ」なんてずいぶんと突飛ですよね。でもそれを現実のものにしてみようかな、と思ったのがきっかけ。テクノミュージックを使ったのは、元々自分がテクノが好きだったのと、この世のものではない「極楽浄土」の音を表現するのにテクノのシンセサイザーの音色が合っていると思ったからです。また、僕らは普段からお勤めしているときに体の中でビート(リズム)を取っていて、それを現実の音にしたものがテクノ法要で刻まれているビートなんです。

―テクノ法要は、朝倉さんの中の「極楽浄土のイメージ」を表現したものとのことでしたが、その他にテクノ法要に込めた思いはありますか?
テクノ法要を始めたきっかけの一つに、「お寺離れ」への不安がありました。仏教とは本当に素敵なものだから、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。そのためには何か魅力的なことをやらなくては、と思ったんですね。お寺って何かきっかけがないと来ることがないでしょう?若い人や普段お寺にくることがない人でもお寺へ行こうと思える「きっかけ」になれば、という思いでテクノ法要をやってみようと考えました。
実は、このお寺以外にも全国で「寺カフェ」やお寺でのライブなど、いろいろなことをやっているお寺があるんですよ。

―お寺って意外とアクティブなんですね。
元々お寺ってアクティブなものなんですよ。常に仏様の教えを広めようという努力は綿々とやっていて。それを今の形でやるっていうのは、僕にとってはすごく大事なこと。若い人にももっと興味を持ってもらうために、新しいことをどんどんやりたいと思っています。

―テクノ法要を始めてから、お寺にどのような変化がありましたか?
普通の日でも来訪者が増えたり、各ご家庭にお参りに行ったときに若い人も参加してくれるようになったりしました。中には、テクノ法要を見るために海外から来てくれる人もいたりして驚いています。

最近だと、「テクノ法要に感動して仏教に興味が湧いた。仏教系の大学に進学を決めました。」と声をかけてくれた高校生もいて、とても感動しました。

―テクノ法要はさまざまなメディアでも取り上げられるなど話題となりましたが、こんなに話題になると想像していましたか?
全く!僕としては「近所の人たちが遊びにきてくれれば良いなぁ」という思いで始まって、それは今でも変わっていません。こんなに話題となったのは、本当に偶然の重なりでした。最初は地元の新聞社が取材してくれて、その記事がネットで拡散されて。2回目のテクノ法要をやるころには、ネットを通じていろいろな人から「協力したい」などのお声がけをいただいて、反響の大きさにびっくりしました。

批判や反対意見はあって当たり前。むしろ、批判はチャンスでもある


―テクノ法要を始めるにあたって、批判は怖くありませんでしたか?
批判への恐怖はありませんでした。というのも、僕は、自分の思いや行動が100%理解されるなんてことはまずありえない、と思っていて。批判や反対意見があって当たり前だと思っています。わかってくれる人の方が少ないと最初から思ってしまえば、批判も全然苦にはなりません。逆に、1人でも2人でもわかってくれる人がいるとすごく嬉しい。

―実際、批判の声はありましたか?
批判というか、ご意見をいただいたことはあります。例えば、初期のテクノ法要では、お経を前に表示していませんでした。すると、ある年配の方から「一緒にお勤めしたいが、煌びやかな照明の演出も見たいので本を見ることができない」とご意見があったんです。それで、プロジェクターでお経を表示することについて考えていたら、ちょうどそのタイミングでニコニコ動画のドワンゴさんが文字の表示に関する協力を申し出てくださって。こうして現在のようなお経の文字を前に表示するスタイルに変わっていきました。このような、ちょっとしたご意見にも耳を傾けることが大切なんだと思います。

テクノ法要がネットで話題になったときに、最初はもっと「叩かれるかな?」と思ったんです。でも、意外と叩かれることはあんまりなくて。逆に、そこで気付かせてもらったこともたくさんありました。

例えば、テクノ法要に対するネット上の否定意見は、ほぼ100%が「こんなお葬式は嫌だ」という意見だったんです。それを見たときに、一般の人のイメージでは「仏教=お葬式」なんだということに気付きました。仏教は亡くなった人のものという図式が見えて、僕はそこを変えていきたいと思うようになりました。「本当は、仏教は生きている我々のためのものなんですよ」というメッセージを出していきたいという思いを、ネットの中の否定的な意見からいただいたんです。このように、批判はチャンスなんだと思います。

「批判を恐れて一歩が踏み出せない」という人の後押しになれたことが嬉しい


―テクノ法要をやって良かったと思うことや、心に残っているエピソードを教えてください。
テクノ法要を見たという若いお坊さんから「自分もお経を編曲してオリジナルのものを作ってみたことがあるが、それを表に出すことができなかった。でも、テクノ法要を見て、僕もやってみる勇気をもらいました。」という、嬉しいメッセージをもらったことがあります。何かやってみたいのに踏み出せずにいるお坊さんも、たくさんいるんですね。そういう人の後押しになれたかもしれないというのがすごく嬉しいですね。気持ちが動くきっかけになれるって幸せなことだと思います。
他にも、今、中国地方で「僕らのテクノ法要を作ろう」という動きもあって。いろんな人に影響を与えられたというか、思いを受け取ってくれる人がたくさんいることが嬉しいです。

また、僕自身もこの活動を通して、いろいろな人たちと知り合うことができました。そして自分自身も、多くの影響を受け続けています。自分にとっても、他の人にとっても、テクノ法要が「ご縁」のきっかけとなっていることを幸せに思っています。

―今後は?
この先、僕の技術や好みは変わるでしょうし、やりたいことも変わっていくかもしれません。テクノ法要も、今のまま永遠にやっていくつもりは全くなくて、状況に任せて動いていこうかなと思っています。形はどんどん変わっていって良いと思うんです。最も避けたいのは形骸化すること。何のためにやっているのか、目的を常に明確化してやっていきたいと思っています。

―アイディアを持っているのに批判が怖くて一歩踏み出せない人へ、メッセージをお願いします。
批判とは、見方を変えれば応援の声と捉えることもできます。批判のご意見は、自分のやっていることに対していろいろな気付きをいただけるチャンスです。
批判を恐れて何もやらないと、何も生まれません。批判を覚悟してしまえば、そこから未来が開けます。なるようになる、というか、なるようにしかなりません。もしダメだったら、また次を考えれば良い。「とりあえずやってみる」っていうのは、とても大事なことだと思います。

(取材・文:imarina)

プロフィール
朝倉 行宣(アサクラ ギョウセン)
1967年福井県福井市生まれ。
龍谷大学在学中より京都でDJ、照明オペレーターとして活躍。
25歳のときに実家である照恩寺に戻り、社会福祉施設や私立学校に勤務をしながら僧侶としての活動を開始する。
2015年に照恩寺第17代住職を継承。その後、2016年より音楽・照明と仏教の法要を融合した「テクノ法要」を行っている。