転職ノウハウ

フリーランス駆け出しのリアルと“成功のカギ” フリーWebクリエイター今村さんインタビュー

経験者に聞くフリーランスの現実と、実現した「自分らしい働き方」とは?

働き方改革の推進により、近年ますます「フリーランス」としての働き方への注目が高まっています。今回は、会社員からフリーのウェブクリエイターとなった今村優さんに、転職して生計を立てるまでの苦労や、得られた「自分らしい働き方」について伺いました。

元々は、フリーランスにはなりたいと思わなかった

―まずは経歴について教えてください。

大学を卒業後、約10年間会社員として働いたのち、2014年に結婚を機に会社を辞めてフリーランスになりました。会社員時代には数回転職したこともあり、Web制作業、営業などの業種を経験しました。現在は主にWeb制作を行っています。

―昔から「いつかは独立したい」というように、フリーランスになることを考えていましたか?

元々は、フリーランスになりたいと思ったことはありませんでした。むしろ、「フリーランスにはなりたくないと思っていた」というほうが正しいかもしれません。というのも、自分の周りのフリーランスの人たちを見ていて、「フリーランスって大変そう」というイメージがあったからです。営業のために足を運んだり、作業を行ったり、全て1人でこなさないといけないって大変なことだと思うんですよね。

ですから、結婚を機に転職しようと思ったときも、最初はフリーランスになるという選択肢はありませんでした。ですが、そんなとき偶然「クラウドソーシング」というものを知ったんです。クラウドソーシングというのは、オンライン上で「仕事を依頼したい人(企業)」と「仕事を受注したい人」をマッチングするサービスのこと。このような仕組みがあるということを知って、「こんなふうに営業がネットでできるなら、フリーランスになるのもアリかも」と考えるようになりました。

現実はそんなに甘くなかった

―フリーランスになってみて、それまでのイメージと実際とのギャップはありましたか?

フリーランスになることを決めたときは、「ある程度のスキルとやる気さえあれば自分にもできる」と思っていました。でも、当然のことながら、いくらやる気があっても仕事をもらえないと働くことはできない。そこをあまり想像できていなかったんです。仕事はそんなに簡単に受注できるものではないということをフリーになってみて初めて知って、「そんなに甘いもんじゃないんだな」と痛感しました。

―最初は苦労も多かったのでは?

フリーランスとしての仕事・収入がほとんどないうちに会社を辞めてしまったので、最初は月収が1万円くらいしかなくて。経済的にはもちろん、働きたいのに働けないことが辛かったですね。最初のうちは、採算を度外視した低価格で仕事を受注して、とにかく実績を作ることに専念しました。
例えば、1番最初の仕事なんて、本当は1万円くらいの内容のものを1000円で受注したことも。内容に見合っていない金額で受注しても、それでもなかなか仕事をもらえませんでした。どうすれば仕事がもらえるかわからないというのが一番の苦労だったと思います。

―辛い時期や困難を乗り越えるために、会社員時代の経験が役立ったと思うことはありますか?

まず、1つ目に多くの本を読みました。特に、会社員時代にはデール・カーネギーの「人を動かす」や、ソフトバンク会長の孫正義さんの記事など、自己啓発系・ビジネス系の本や記事をたくさん読みましたね。フリーランスは、会社員とは違い、経営者に近い立場であると思います。経営者や成功者の本を読み、その考え方や発想を身につけておいたことで、なかなか上手くいかずに落ち込みそうなときにも素早く気持ちを切り替えて次の手を打とうとすることができました。

2つ目は、何か1つでもいいから自分にとって大きな成功体験をしておくことです。僕の場合は、以前勤めていたWeb制作会社で観光案内用タッチパネルのソフトを作ったことでした。当時は、まだタッチパネルが今のように普及していない頃で、社内の誰もが「無理な依頼なのでは」と感じていました。そんな仕事が僕に任されることになったのですが、タッチパネルのソフト作りなんて、普段の業務内容とは違うことばかりで何から手をつけて良いかわからない。そこで、まずは作業を細分化して、普段の仕事内容と少しでも関わりのありそうな部分や、できそうなことに対して、仮説と検証を繰り返すことから始めました。

例えば、ソフトの中に観光マップを入れる必要があったのですが、拡大縮小したり、上下左右に不具合なく動かしたりできるマップを作ろうと思うとなかなか難しい。ですが、ボタンを押したら動くというのなら、難しいけれどできそう。それで、まずはWeb制作でクリックしたら反応するボタンを作るのを応用して、触れたら反応するボタンを作って…、という風に、「できないこと」を、「できそうなこと」になるまで細かく分けて、作業を進めていきました。そして、少しずつ問題をクリアしていって、ついにそのソフトを完成させることができたんです。

この成功体験は、1つの大きな自信となりました。この経験があったから、何か問題に直面したときでも1つずつ仮説と検証を繰り返しながら乗り越える力がついたのだと思います。

クライアントにとっての「良い取引先」となる努力が大切

―最初のうちは仕事をもらえず苦労したとのことですが、どのようにして軌道に乗せることができたのですか?

「これで上手くいった」とか、「これをやったから激的に変わった」というのはなくて、それまでの1つ1つの積み重ねが結果につながっていったのだと思っています。受けた仕事は責任を持って丁寧に行う。それを繰り返しているうちに、継続してご依頼くださるクライアント様も増えていきました。

よく、「具体的にはどのようにしたら継続的に依頼をもらえるようになるのか?」「クラウドソーシングで上手くいくためのノウハウを知りたい」といった質問をされることがあるのですが、僕は上手くいくためのマニュアルのようなものはないと思います。ただ、クラウドソーシングで継続的に依頼をいただくためには、「良いクライアントと出会うこと」が大きなポイントであると思います。

「良いクライアント」というのは、まずはちゃんとコミュニケーションを取ることができる人。依頼内容に関する説明をきちんとしてくれたり、こまめに連絡を取ることができたり。基本的に仕事のやりとりはメールで行っているので、メールでしっかりとコミュニケーションを取ることは仕事を円滑に進めるために不可欠です。良いクライアント様はメールの文も丁寧で、そこにも相手の人柄が表れていると思います。

また、ちゃんとコミュニケーションを取ることができる人は、相手のこともきちんと考えてくれるので、「とにかく安くしてほしい」といった無茶苦茶な要求はしてこないことが多いです。高い報酬でなくても良いので、内容に見合った金額で仕事ができるのも、良いクライアントの条件であると思います。

良いクライアントと出会うことは、ある意味運まかせのようでもありますが、良いクライアント様と出会い、良い関係を築くことができれば、事業が良い方向に進んでいくと思います。
そのためには、自分自身が「良い取引先」であることが必須条件です。自分が良いクライアント様に出会ったときに「この人とこれからも仕事をしたい」と思ってもらえるように、まずは自分が普段からどんな仕事もきっちりと丁寧に行い、「良い“職人”」になる努力をしておくことが何より大切だと思います。

―自分自身が「良い取引先」、「良い“職人”」となるための努力とは、具体的にどのようなことですか?

相手の想像を上回る仕事をすることです。納期を守るのはもちろんですが、できるだけ納期よりも早めに納品したり、言われた内容をその通りにやるだけでなく、もっと良いアイディアが浮かんだ時にはプラスαとしてそれを提案したり。
あとは、「良いクライアント」と同じなのですが、相手としっかりと丁寧にコミュニケーションを取ること。このような基本的なことをきちんと行って、とにかく目の前の仕事を一生懸命やる。それが、継続して仕事を受注することにつながるのだと思います。

―これまでにクライアントから言われて嬉しかった言葉や心に残っている言葉は?

「今村さんに依頼して良かった」といったお言葉をいただけるのはやっぱり嬉しいですね。
それと、まだ初期の頃、「この先本当にやっていけるのか?」と不安なときに、あるクライアント様が「始めたばかりの今は大変かもしれませんが、続けていって実績が増えていくと、仕事の依頼がどんどん来るようになりますよ」と言ってくださって。半信半疑ながら、それが心の支えになって、軌道に乗るまでの苦しい時期を乗り越えることができました。そして今、実際に仕事のご依頼を継続的にいただけるようになっており、「あの言葉は本当だったんだな」と実感しています。

会社員とフリーランスはどちらもそれぞれの良さがある。自分には今の働き方が合っていた

 

―会社員とフリーランスを比較して、それぞれの良い部分と悪い部分はどのようなものだと思いますか?

会社員の良い部分は、収入が安定していること。僕も会社員時代、給料に不満はありましたが、それでも毎月決まった額の収入を得られるというのは安心できる面だと思います。それから、社会的な信用を得やすいのも会社員の良い部分ですね。一方で会社員の悪い部分は、自分がどんなにがんばっても給料は基本的に変わらないこと。また、会社は色々な人との人間関係がありますよね。人間関係に関しては良い面を持つ一方で、相性の悪い人がいても付き合わなければならないというデメリットも併せ持っていると思います。

これに対して、フリーランスの良い部分は、まず働く時間や場所が自由なことです。毎朝通勤する必要がないですし、1日のスケジュールを自分で決めることができます。労働時間に関しては、僕の場合は会社員時代と実はそれほど変わっていません。ですが、フリーランスはがんばって働いたらその分だけ収入の増加にもつながるので、働くこと自体へのストレスはかなり少なくなりました。
フリーランスの悪い面は、自分で全部やらないといけないこと。仕事を取ってくるのもこなすのも自分ですし、会社員時代にはやったことのない確定申告なども自分で行う必要があります。それに、ケガや病気をしたとき、会社員なら休暇を取ったり他の人が助けてくれたりしますが、フリーランスの場合は仕事を代わりにやってくれる人はいませんし、仕事ができないと収入もなくなってしまいます。

このように、会社員とフリーランスにはそれぞれ良い部分も悪い部分もあり、どちらが良いというものではないと思います。ただ、自分はフリーランスになったことで会社員時代より収入も家族との時間も増やすことができましたし、仕事のストレスも激減させることができました。僕にとっては、今の働き方のほうが自分に合っていたんだと思います。

―フリーランスになって実現した、今の生活について教えてください。

フリーランスになったことで一番大きく変わったことは、家族との時間が増えたことです。会社員時代は、毎日仕事の帰りが遅かったり、休日出勤もあったりするなど、家族との時間があまり取れなかったのですが、今は基本的に家で仕事をしているので、家族と過ごす時間や会話が増え、家族関係がより良くなったと嬉しく思っています。

また、今の僕の働き方は、時間や場所にとらわれないというメリットがあります。例えば、僕は旅行が好きなのですが、会社員時代は休みが少なく、ほとんど旅行に行くこともできませんでした。ですが、今は行きたいときに旅行することができるので、国内や海外を旅行する機会が増えました。ときには、旅行先にパソコンを持って行って、旅先で仕事もしながら長期間滞在することもあります。パソコンとインターネット環境、それさえあればどこでもできる仕事なので、世界中どこでも好きな場所で働くことができるというのが嬉しいですね。

元々、僕がフリーランスを選んだのは、地元の田舎で暮らしながら、家族との時間を持てたりとか、たまには旅行に行けたりとか、そういうささやかな生活を望んでいたためです。実際にフリーランスになったことでそれらを叶えることができましたし、想像していた以上に多くの面が良くなったと感じているので、僕はこの働き方を選んで本当に良かったと思っています。

フリーランスが働きやすい時代。まずはできることから始めてみることが大切

―「フリーランスという働き方に興味はあるが、なかなか一歩が踏み出せない」という人にメッセージをお願いします。

フリーランスという働き方には、向き不向きがあると思います。ですが、現在はクラウドソーシングという仕組みができていたり、「働き方改革」により多様な働き方が可能になったりするなど、以前よりもフリーランスが働きやすい環境になっています。もし、フリーランスに興味があるのなら、毎日のスキマ時間を活用してまずは副業的に始めてみるのも良いでしょう。少しずつでもできることから始めてみることが大切だと思います。

(取材・文:imarina)

プロフィール
今村 優(イマムラ マサル)
1981年福井県南条郡生まれ。
大学卒業後はWeb制作会社に就職。その後、数度の転職で営業などを経験し、2014年にフリーランスとして独立。現在はWeb制作業を中心に活躍している。
2016年、クラウドソーシングサービス「Lancers」の「ランサーオブザイヤー」を受賞。