転職ノウハウ

”好き”を仕事にしたいなら、相手を幸せにする方法を探ろう。大好きなチーズで成功した女性経営者に学ぶ仕事のスタンス

チーズで人を幸せに。チーズのプロに聞く「好き」を仕事にするヒント
「好きなことを仕事にできたら……」と思う人はたくさんいるけれど、「好き」を仕事にするのはなかなか難しいもの。今回は、チーズが大好きでチーズの資格を取得し、チーズの専門店を経営しているチーズ業界のスペシャリスト、高橋かず子さんに、「好き」を仕事にするヒントについて伺いました。

きっかけはナチュラルチーズとの出会い。「本当に美味しいものをみんなにも知ってほしい」

様々なチーズ

――これまでの経歴と、現在の仕事について教えてください。
元々は在宅の仕事をしていたのですが、あるとき、知人に誘われて行ったワイン会で美味しい「ナチュラルチーズ」に出会いました。初めて本場のナチュラルチーズの奥深さを知って、「これはもう、あちこち食べてまわりたい!」と思って、チーズの食べ歩きを始めたんです。

実はちょうどその頃、プライベートで辛いことがあったので、何かに打ち込みたかったというのもあるかもしれません。とにかくチーズにどっぷりはまり、県内のフレンチやイタリアン、ワインバーなどをまわって、いろいろなチーズを食べましたね。都会にはワインバーやチーズ専門店など、チーズに出会える場所がたくさんあることを知り、チーズのためだけに東京や大阪に通うようになりました。さらにチーズに関するセミナーで「チーズプロフェッショナル」という資格の存在を知って、自分も資格を取得。

そうしているうちに、「チーズ仲間」がどんどん増えていきました。その人たちが開催しているチーズのイベントに参加すると、もう本当に楽しくて。その後は、自分でもチーズ会を開くようになって、5年前にチーズ専門店をオープンしました。現在は、チーズの販売と、チーズ会やセミナーの企画・運営を行っています。

――そんなにのめり込むほど、チーズには魅力があるんですね。

チーズの盛り合わせ

チーズって本当に奥が深いんです。加工品のプロセスチーズと違って、ナチュラルチーズは生き物。今日と明日で味が変わるし、夏のミルクで作ったものと冬のミルクで作ったものでは全く味が違うんですよ。夏は牛も食欲がなくなり、水をたくさん飲むので、ミルクもさらっとしています。逆に冬は脂肪を溜め込むので、ミルクも脂肪分が高くなって濃くなる。もちろん、季節が変われば牛が食べる草の種類だって変わります。また、熟成期間や環境、牛の種類によっても味が大きく異なります。

そういうことを知っていくと、もっといろんな種類のものを食べてみたくなりますよね。「本場のカマンベールってどんな味?」とか、「熟成期間が短いものはどんなだろう?」とか。

チーズは、作った後の管理も大切。例えば、青カビのチーズは放っておくと水が溜まるので拭いてあげないといけないし、ヤギのチーズは乾燥させないといけない。保管する向きも、同じ方向ばかりにならないように、「今日は横向きにしよう」とか気をつけています。こんなふうに、チーズの保管って意外と難しいので、お客様にはその日に食べる分だけを買って、一番美味しい状態で食べてもらいたいですね。保管するのは店の役割です。言うなれば、私はみんなの「チーズ専用冷蔵庫」でありたいと思っています。

――高橋さんの「チーズ愛」がすごく伝わってきました!では、「好き」を仕事にしようと思ったきっかけは?
一番のきっかけは、「本当に美味しいものをみんなに広めたい」と思ったこと。チーズの食べ歩きを始めて、日本国内だけでなく、フランスで本場のチーズに触れる機会もあったのですが、そこでたくさんの美味しいチーズに出会ううちに、「こんなに美味しいものがあるのにみんな知らないなんて、もったいない!もっと知ってもらいたい!」と思うようになったんです。よく、「青カビのチーズは嫌い」とか、「ヤギはにおいがきつくて苦手」とか言う人がいるけれど、それは本当に美味しいチーズを知らないだけ。それらの中にも美味しいチーズがあるってことを知ってほしいです。

私自身、最初からチーズ屋になろうと思っていたわけではありません。初めは、「美味しいチーズがあるので、一緒にチーズ会をやりませんか?」ということを、県内のカフェやイタリアンのお店などに言ってまわっていました。多分、変な人だと思われていたでしょうね。そうやって、いろいろなお店でチーズ会をするようになると、今度はチーズ会に来てくれた人たちから「どこで買えるの?」と聞かれるようになって。「誰もが気軽にチーズを買える場がほしい」と思い、拠点として店を出すことにした、というのが始まりです。

「好き」を仕事にするなら、自分の「好き」で誰かを幸せにしたり豊かにしたりすることが必要

チーズの盛り合わせ
――大人になっても「好き」を突き詰めることに不安や迷いはありませんでしたか?
「お店を作って、利益をガンガン出していこう」という目的なら不安だったかもしれませんね。自分の場合は元々の仕事を続けながらですし、「拠点」としての意味合いで作った店だったので、そういった不安はありませんでした。
でも一番は「本当に美味しいものを出していれば、絶対みんなわかってくれる」と思っていたから。そのくらい、自分の好きなものに自信があったので、不安にはなりませんでした。

店を出すまでは、イベントで使うチーズを自宅の冷蔵庫に入れて保管していたのですが、なんだかもったいなくて。店頭に並べておけば、みんながチーズを見ることができるので、それだけでも価値があると思うんですね。そして、1人でも2人でも人が来てくれて、ほしい人がチーズを買ってくれて、「美味しい」と言ってくれたら……と思うと、不安よりもウキウキ感の方がずっと大きかったです。

――そうは言っても、好きというだけで仕事にするのはなかなか難しいですよね。「好き」を仕事にするために必要なことは何だと思いますか?

チーズ専門店「HAPPY CHEESE」

「好き」を仕事にするには、それが相手を幸せにしたり、豊かにしたりするものである必要があると思います。どうすれば、相手が笑顔になるのかを考えて、工夫することが大切なのではないでしょうか。

私の場合は、チーズをほんの少量から、グラム単位で買えるようにしました。自分がチーズを食べ歩きしていたときは、ほとんどのお店が100グラム単位の販売ばかりで。でも私のようにいろいろなチーズを試してみたいと思う人はきっといるはずなので、「少量から売ってくれる店があったら嬉しい」「こんな店なら絶対行きたい」という当時の自分の声に応える形で、今のスタイルの店にしました。このように、好きなことを仕事にしたいのなら、相手が求める形にして提案することが必要だと思います。

「好き」でやっていきたいなら、「好き」をとことん突き詰めること。その分野に関しては自分が誰より知っていなくてはいけないし、絶対勉強をやめてはいけません。

――店を出すときに苦労したことや努力したことはありますか?
努力というわけではないのですが、私が今、店をやっていけているのは、店を出す前の2年間、あちこちでチーズ会を開催するなど、チーズの普及活動をやっていたおかげです。自分が何かしたいなら、まずは知ってもらったりファンになってもらったりするための普及活動が絶対必要。それをせずに、いきなり店を出したって上手くいかないと思うんです。

実際、今来てくれているお客様の中には、店を出す前から私を見ていて、応援してくれていた人がたくさんいます。私がお店を出すことが決まったときに、その人たちが「絶対行くよ」って言ってくれて、支えてくれたので今があります。

好きなものを誰かと分かち合えることが幸せ

チーズの盛り合わせ

――「好き」を仕事にする幸せとは?
私は、お店に来てくれた方に試食してもらうのが大好きなんです。それは、食べたときの顔を見たいから。「美味しいでしょう!」と、一緒に分かち合えるのが幸せですね。以前はチーズの味が季節によって違うことを分かち合える人なんて身近には誰もいなかったけれど、店をやっているうちにわかってくれる人が増えていき、今ではみんなと感動を分かち合うことができます。そもそもの目的が美味しいチーズを普及することなので、お客様がチーズを買うかどうかということよりも、食べてくれたり、美味しさをわかってくれたりすることが何より嬉しいです。

お店をやっていて、お客様に言われると嬉しい言葉もたくさんあります。「この店のおかげで青カビチーズを食べられるようになった」とか「この店があってくれて良かった」とか言われると、とてもやりがいを感じます。自分が大好きなチーズを美味しいと言ってくださったり、この前来たお客様が、もう一度来店してくれたり…。そういうことが本当に幸せです。

――今後、やってみたいことや挑戦したいことはありますか?
ヨーロッパをもっとまわりたいです。現地でしか味わえないチーズがあるので、それに触れに行きたいですね。
また、地元である福井の食とチーズのコラボレーションも今後やってみたいと思っています。

――「好きだけど、それで食べていくなんてきっとムリ」と思ってしまう人にメッセージをお願いします。

高橋かず子さんHAPPY CHEESEの前で

ただ好きなだけで仕事にするのはなかなか大変なことですし、生半可な気持ちでは難しいことも多いでしょう。でも、「好き」がブレることなく、それが相手を幸せにしたり、豊かにしたりできるものであるなら、きっと大丈夫。まずは、どうすればあなたの「好き」が相手を幸せにするのか考えることから始めてみてください。

(取材・文:imarina)

プロフィール
高橋かず子(タカハシ カズコ)
1978年福井県福井市生まれ。
福井県立大学卒業後、印刷会社に就職。後に働き方を在宅に変更する。
あるとき、美味しいチーズとの出会いをきっかけにチーズにのめり込み、2012年に「チーズプロフェッショナル」の資格を取得。
美味しいチーズを広めるため、福井県内を中心にチーズの普及活動を精力的に行う。
2014年にチーズ専門店「HAPPY CHEESE」をオープン。
Facebook:
https://m.facebook.com/happycheesefukui