転職ノウハウ

非合理的でも‟健康的で美しい消費”を。ファッションブランド「foufou」のデザイナーに学ぶ最適な働き方

非合理的でも私が美しいと思うことを貫く。ファッションブランド「foufou」のデザイナーに学ぶ“最適”な働き方
SNSを介して多くのファンを獲得し、インスタグラムのライブ配信を利用して洋服をたちまち完売させるなど、幅広い層の人気を集めるファッションブランド「foufou(フーフー)」。「健康的な消費のために」とコンセプトを掲げるデザイナー兼代表の高坂マール氏が目指す理想の服作りとは?

ファストでもスローでもない、心地いいブランドを目指して

foufou高坂マール

――はじめからファッションデザイナーを目指されていたのですか?
洋服はもともと好きでしたが、デザイナーになりたいという熱い気持ちがあったわけではありません。アルバイト先で出会った先輩に「もの作り」をすすめられたのがきっかけで、なんとなく思い立ったのが始まりです。

大学を卒業後、昼間と夜間の仕事を掛け持ちしながら1年間お金を貯めたあと、24歳で文化服装学院の2部服装科に入学しました。すぐにアパレルメーカーの生産管理の仕事を見つけて就職し、仕事をしながら、2016年に「foufou」を立ち上げました。

当時は趣味の延長で始めたハンドメイドのブランドでしたが、インスタグラムを使って販売するうちに注文が増え、量産の必要に迫られます。そんな折、「nutte(縫製に関することをプロの職人に依頼できる服作りのオンラインサービス)」を運営するステイト・オブ・マインドさんから協業のお話をいただき、本格的にブランドとしての活動をスタートしました。

foufou夏限定の赤いワンピース
提供:foufou

――「foufou」のコンセプト、ブランドの特徴について教えてください。
デザインする上でもっとも大切にしているのは、適度にお洒落で適度に上質、使い勝手がよく、価格も手頃であること。「健康的な消費のために」をテーマに、凄まじく革新的な洋服でなくてもいいけれど、かといってファストファッションには物足りなさを感じている方たちが欲しいと思える服作りを目指しています。

デザインのテイストは、シンプルで上品、かつトラディショナル。素材は天然素材が中心で、色はベージュや黒、白など、一型につき一色というのが主流です。普段はあまり派手な色を着る機会がない方でも、気分やスポットで購入してもらえることを狙いとしています。例えば、夏を理由にまとって高揚感を感じて欲しいという思いから、毎年の恒例行事として、夏限定で赤いワンピースを出しています。

――デザインソースとなっているようなものがあれば教えてください。
個人的にはプレッピースタイルからインスピレーションを受けていますね。古くも新しくもないスタイルには大いに魅力を感じています。

プレッピースタイル
「foufou」のデザインソースの一つとなっているというプレッピースタイル*

最近は音楽とファッションが分断される傾向がみられますが、私の場合は音楽の影響も大きいと思います。とくに、アメリカのブルックリン出身のインディーズロック・バンド「ザ・ドラムス(The Drums)」から多くの刺激をもらっています。

注* プレッピーとは、名門私立学校(プレパラトリースクール)に通学している良家や裕福な家庭の子息らの俗称。エンブレムブレザーやショート丈のボタンダウンシャツなど、トラディショナルで上質な服装を着くずすコーディネートを特徴とする特有のスタイルがプレッピースタイルと呼ばれる。

――「foufou」の販売方法はどのようなものですか?
現在は、オンラインでの予約・在庫販売がメインです。予約商品の販売日にはインスタグラムのライブ配信を実施し、視聴者からの質問コメントにリアルタイムで回答しています。毎回、同時接続で約300人以上の方に視聴していただいています。

オンラインのほか、ギャラリーなどをお借りして試着会も開催しています。サンプルを試したあと、試着会専用のオンラインストアで購入するという仕組みで、これまで東京だけでなく、大阪、札幌などの地方でも積極的に開催してきました。

ただ、オンライン通販もSNSも、洋服を欲しいと思ってくれる方々に届けるための手段に過ぎません。「foufou」の販売方法は「イケてる」「イマドキ」なマーケティング戦略、販売スタイルとして取り上げられがちですが、私自身はそうした評価に少し違和感を感じています。実店舗の展開も含め、その都度いいと思えるスタイルを柔軟に採用していくつもりです。

「健康的な消費」が意味するものとは?

foufou高坂マール

――「健康的な消費のために」というコンセプトについて詳しく教えてください。

私自身は学生時代、アルバイトで稼いだお金のほとんどを洋服代に使っていました。ところが最新のファッションに身を包んで表参道を歩いているうちに、ふと見かけばかり気にして中身がない自分に気が付き、虚無感にかられてしまったんです。

確かに、お洒落をすることは楽しいことですが、洋服を着ることよりも大切なことはたくさんあります。適度な消費でファッションを楽しみ、好きな人と出かけたり、自分の知見を広げたりするためのお供にして欲しい。ブランドのコンセプトの根底には、かつての自分みたいに「ファッションの奴隷になっている人」を救いたいという思いあります。

――洋服だけでなく、消費活動全般に関して健全なコミュニケーションを目指されているということでしょうか?
服飾学校の同級生の多くは、夜遅くまでインターンとして無償で雑務をこなしていました。いざ自分が作り手になってみると、そうした不健全な労使関係に基づく従来のクリエイションのありように疑問を抱くようになりました。クリエイションそのものだけでなく、その奥にあるものも「納得できるもの」でなくてはならないと考えるようになったわけです。

縫製をされる方にきちんと工賃をお支払いし、プロダクトの価値を高めるために発信をする。その上でお客さんが納得して洋服を購入してくださる。これは私が勝手に目指していることで、いろんなクリエイションの形があっていいし、誰にも考えを押し付けるつもりはありません。でも、そんな均衡の取れた一連のサイクルを存続させることが健康的だし、“美しい”と言えるのだと私は思っています。

合理性よりも美しさを優先した服作り

――ブランドを運営する上で心がけていることはありますか?
ファッションを楽しんでもらうためには、安心してもらえるような環境作りが欠かせません。そのためには、透明性やブランドへの信頼など、お客さんを絶対に裏切れないという気持ちがありますが、他方で驚きの要素も必要です。お客さん自身がまだ気が付いていない、潜在的な望みを掘り起こすような作業を並行して行うよう心がけています。

淡々と続けていくにはどうしたらいいかも常に考えていますね。ブランドを持続させていくためには、変わり続けなくてはなりませんし、無理なく事業を転がしていくためには規模の変化に応じた速度調整も必要になります。仕組みが壊れてしまわないようコントロールすることが大切だと思っています。

――今後、どのようにブランドを展開されていくおつもりでしょうか?
私が目指しているのは、小さなコミュニティ。例えるなら、商店街の八百屋さんのように自分の目が届く範囲で販売できて小回りの効く、普通の洋服屋です。

テーマとして掲げる「健康的な消費」を実現するには、適正な価格や原価率の高さ、日本製であることなど、ブランドの特性が現実に根ざしたものでなくてはなりません。ところが、リアリティにこだわるだけで、お客さんの興味を長く引き続けることは困難です。そこで、私はお客さんにとって信頼・安心できる身近なブランドであろうとする一方で、適度なファンタジーを提供することをとても大切にしています。

例えば、夏限定で販売している赤いワンピースの販売に際しては、ストーリー性をありありと感じていただけるような動画を作成し、メジャーシーンで活躍されている「ザ・なつやすみバンド」さんに、オリジナル曲を書き下ろしていただきました。赤いワンピースを購入すると曲をDLできるようになっているので、プレイリストに入れておけば、何年か先にふと曲を耳にしたときに、赤いワンピースとともに今年の夏を思い出すという仕掛けがしてあるんです。そんなふうに、適度な値段で手に入るファンタジーを感じていただければと思っています。

foufouのワンピース
提供:foufou

とんでもない生地量のスカートやデザイン性の高いカフス、くるみボタンをあしらったワンピースなど、非合理的で無駄に思えるようなディテールを、“ギュンカワ”を合言葉にして楽しめるのも「foufou」の持ち味の一つです。そんなデザインの余白部分にもファンタジーが宿ると思っています。

“最適”な職場を選ぶことが健康的に働くための第一条件

foufou高坂マール

――最後に読者の方にメッセージをいただけますか?
SNSのダイレクトメールなどで、専門学校生や社会人の方々から仕事に対する向き合い方について相談をいただくことは、実はとても多いんです。それらのすべてに返すようにしていて、インスタストーリーにのせて返事をするのが割と好評をいただいています。ところが、私のような変な大人は、自分の人生を肯定しようとしてバイアスがかかった答えしかできない。それをお断りした上で、ラジオでたまたま耳にした松任谷由実さんの言葉を引用させてもらうことがあります。

番組にゲスト出演し、自分も曲作りをしたいと話す松浦亜弥さんに対して、松任谷さんがおっしゃったんです。曲を作る人はあれこれ考える前に、生活の一部として作っちゃう。だから作ろうという気持ちがあるのにまだ作っていないのなら、きっとやめたほうがいい。むしろ、人が作ったものを自分の体に入れて表現できてしまう才能に磨きをかけたほうがいいと。

例えば、かつて私が生産管理の仕事をしていたのは、当時の自分のリソースを洗い出した上で、職種に適性があることがわかっていたからです。結果的に多くのことを学び、服飾学校の卒業時に就職試験を受けたすべての企業から内定をいただくことができました。

思い返してみれば、ブランドを立ち上げる際に、誰かにダイレクトメールを送って相談しようと思ったことも一度もありません。あれこれ考える暇もなく作っていたというか……。きっと誰にでも役割があるはずで、自分にとって“最適な”ことを選びとることが大切なのではないかと思います。

(取材・文・撮影:鈴木 一禾)

プロフィール
高坂 マール(コウサカ マール)
ファッションブランド「foufou」代表。大学を卒業後、文化服装学院で学ぶかたわら、アパレル企業に勤務する。在学中の2016年、「健康的な消費のために」をコンセプトにファッションブランド「foufou」を設立。2018年からは縫製関連のクラウドソーシングを活用し、D2Cファッションブランドとしては異例の月間1,000万円という売上実績を打ち立て話題となる。
インスタグラム:https://www.instagram.com/foufou_ha_fukuyasan/