転職ノウハウ

「バンド活動も接客も本質は同じ」家電専門店ノジマ店長とメジャーデビュー14周年バンドで培った“感動”のつくりかた

家電専門店ノジマ店長とメジャーデビュー14周年バンドで培った“感動”のつくりかた

家電専門店「ノジマ」のイトーヨーカドー昭島店で店長を務める村井清崇さん。9年前にアルバイトとして入社し、販売員として“販売成績優秀賞第1位”で表彰されたこともあるという、叩き上げの店長さんです。

家電専門店ノジマ店長とメジャーデビュー14周年バンドで培った“感動”のつくりかた

画像提供:村井清崇さん

そんな村井さんにはもうひとつの顔が。それは、バンド「theSoul」*のボーカルとしての活動です。家電専門店の店長とバンド。一見まったく違うように思えるお仕事ですが、「バンド活動も接客も本質は同じ」と村井さんは話します。

*「theSoul」……2006年に東芝EMIよりメジャーデビューしたバンド(現在は独立)。

苦労を乗り越えた先の、もうひとつの“天職”

家電専門店ノジマ店長とメジャーデビュー14周年バンドで培った“感動”のつくりかた
――村井さんは、なぜ、バンドのボーカルとノジマの店長を続けているのでしょうか。

元々はバンドの方が先だったんです。2003年に地元・福岡でバンド「theSoul」を結成し、2006年に「Zepp Fukuoka」を舞台にしたワンマンライブの成功をきっかけにメジャーデビューしました。このときは、イベンターも通さずに自分たちだけの力で1,200人くらい集めることができて感動しましたね。その3年後には音楽事務所から独立したのですが、固定収入がなくなったので、アルバイトをはじめることにしたんです。

――それでノジマに入社されたんですか?

いえ、当初は昼間にバンド活動をしながら、夜は24時間営業しているリサイクルショップで夜勤のアルバイトをしていていました。ところが、無理がたたって、夜勤中に倒れてしまいまして……。そこで、健康を損ねないような、昼間の仕事を探すことにしました。そのときにオープニングスタッフを募集していた「ノジマ」に、アルバイトとして入社したのが2011年のことです。

――店長に就任したのはいつころですか?

実は早い段階から部門責任者にならないかという打診は受けていたのですが、音楽との両立のために断り続けていて……(笑)。アルバイト時代が長かったんです。いろいろあり、部門責任者を経て店長になったのは5年前のことでした。

――早い段階から部門責任者に誘われていたのは、どういった理由だったのでしょう。

最初からお客様と寄り添う姿勢がよかったからでしょうか。その結果が販売成績にもつながり、販売成績優秀賞第1位で表彰されたこともあります。

とはいえ、当時は家電についての知識はまったくなく……。そこで、とにかく親身になってお客様の話を聞き、機能やサイズなど、どこがお客様の要望につながるポイントになるのかを考えていました。まあ、私としては「目の前のお客様に喜んでもらいたい」と思い、それを愚直にやり続けただけなんですが(笑)。

――愚直にお客様のことを考えることが、販売成績につながる。販売の仕事をする人にとって、すごく参考になりそうなお話です。

店長になってから、スタッフに話すときは、「とにかく“本気でお客様の事を思う気持ち”を持つことを大切にしてほしい」と伝えています。

音楽をやっていると、 演奏しているときに考えたことがそのまま観客に伝わるんです。これをノジマの仕事に置き換えると、「面倒だな」って思った瞬間に伝わってしまうということ。私はお客様に楽しんでいただきたいですし、本当に良いものを選んでもらいたい。その気持ちは、きっとお客様にも伝わっていると信じています。

“出る杭を打つ”のではなく、“出る杭を伸ばす”

――村井さんが店長の仕事を続けてこられたのはなぜでしょうか?

ノジマって“出る杭を伸ばす”社風があるんです。自分で成長しようとする前向きな人のことを応援してくれる会社なので、いろんなことに挑戦させてくれる環境が、自分にとってのやりがいになっています。

――村井さんはノジマで何か挑戦されましたか?

店内でクリスマスライブを開催したことがあります。80歳を過ぎたご年配の女性が、「ノジマに来て音楽を聴けると思わなかった」と喜んでくださったのが印象的でしたね。それがきっかけで先日、またご来店いただき、商品をひとつ買っていただきました。

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――ライブ……! それは村井さんならではの試みですね。村井さんが店長になってから、スタッフの提案を実現したことはありますか?

もちろんありますよ。昨年のハロウィンのときに、スタッフから「土地柄、小さいお子さんを連れて来られる方が多いので、撮影スポットをつくって撮影会をしたい」という提案がありました。

それで、最新機種のカメラや最新型プリンターを手配して、撮影したお写真を参加者のみなさまにプレゼントすることにしました。メーカーさんも協力的で、インクや写真の用紙も手配してくれたんです。結果的に2日で50組もの方に来店し、参加いただくことができました。

実は、私が店長を務めるこの店舗は2019年9月にオープンしたばかり。まだ認知度が広がっていないので、まずはこうして、お客様との接点づくりをしていきたいなと思っています。

――今の時代、家電はネット通販でも購入できてしまいますが、お客さんと接点を持てることが実店舗の強みかもしれないですね。

実際に触って商品を体感していただけることと、お客様の記憶に残ることを大事にしていきたいですね。撮影会やライブイベントも、その一環として行いました。

サラリーマンが音楽を届けることに意味がある

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――家電専門店の店長を務めながら、ミュージシャンとしても活動されていますが、アイデンティティの軸はどちらにあるのでしょうか。

両方があっての自分なので、どちらが軸になるとは言い切れないですね……。僕がサラリーマンをしながら、音楽を届けることに意味があると思っています。

プロミュージシャンの多くは、音楽中心で活動されています。でも、ライブに来てくれるみなさんの多くは、組織に入って仕事されている。同じように、仕事や人間関係に悩んでいるからこそ、僕らの音楽を深く浸透させることができると思っています。

――ライブでも、お客さんに寄り添った演奏をされているんですね。

音楽も、接客も、ひとりよがりではお客様の心を動かすことはできません。寄り添うからこそ届けられる思いって、きっとあるんですよ。

――そうかもしれませんね。仕事中に倒れてしまった経験を踏まえて、販売の仕事に興味のある人にアドバイスをいただけたら。

私は仕事中に倒れて、「このまま死んでしまったら」と想像しました。そのとき、「人生には限りがあるのだから、仕事の時間も楽しまなきゃもったいない」と思ったんです。

店長をしていると、仕事は仕事として割り切っている人が多いと感じています。それはもちろん悪いことではないのですが、働いている時間が1日8時間くらいと考えると、人生の3分の1は仕事に時間を費やしている。
だから、仕事も自分から楽しみにいったら、もっと豊かな時間になるんじゃないでしょうか。

「買ってよかった」と思われたい

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最後に、村井さんに販売の実演をしてもらいました。

そこで気づいたのは、さりげない会話のなかから要望を汲み取り、商品と結びつけるのが上手だということ。そして何より、こちらが笑顔になってしまうような気持ちのいい接客。

「家電を買うのは一瞬ですが、5年、10年と長く付き合うことになりますよね。実際にお家で使うときに、『ノジマで買ってよかったな、私から買ってよかったな』と思っていただけるのが私の幸せ。もし使っているうちに、ちょっとでも気になるところが出て後悔をさせてしまったら、と想像すると寒気がするんです……!」

そう話す村井さんの誠実さが、実演からも伝わってきました。

ミュージシャンとして、ノジマの店長として。村井さんの生き方は、これからも、音楽でも、接客でも、人の心を動かしていくことでしょう。

 

プロフィール
村井清崇
1979年4月12日長崎県生まれ。株式会社ノジマイトーヨーカドー昭島店店長。2003年、河野健太郎(Vo.)とともにバンド「theSoul(ザ・ソウル)」を結成し、ボーカルを担当。2005年には4名となったバンドメンバーで上京し、ストリートライブで人気を博したことをきっかけに、東芝EMIよりメジャーデビューを果たした。2015年にはノジマの家電部門優秀賞第1位を受賞、2016年にはCEO賞ノミネート。現在は、イトーヨーカドー昭島店の店長を務めるかたわら、バンド活動も続けている。Team theSoul Official Twitter:@teamthesoul

撮影協力:株式会社ノジマイトーヨーカドー昭島店

(文/栗本千尋、撮影/中島仁菜、編集/鈴木一禾)