転職ノウハウ

「転職してキャリアをブレンドする」・片岡英彦

片岡英彦(かたおか ひでひこ)さん自分がやりたい仕事をするため、あるいは、より待遇の良い職場へ移るため……転職の動機は人それぞれです。そんな転職を決意した社会人は、いったい何を考え、どのような経験をしてきたのでしょうか。
転職経験者へのインタビューを通して「これまでの転職から学んだこと」や「人生の岐路に立ったときの決断の仕方」などを紹介します。
今回お話を伺ったのは、戦略PRプロデューサー・片岡英彦さん(47歳)。広報PRのプロフェッショナルであり、東北芸術工科大学で教鞭を振るう准教授、そしてWebマガジン『TOKYO WOMAN』の編集長でもある人物です。過去には6度の転職を経験。日本テレビからアップル、マクドナルドなどの企業を渡り歩いてきました。2017年9月には、ご自身の半生や考えをまとめた著書『日本テレビ・アップル・MTV・マクドナルド・ミクシィ・世界の医療団で学んだ、「超」仕事術』(方丈社)を刊行。そんな片岡さんに、仕事の上手な進め方やキャリアアップのノウハウを聞きました。

上手に仕事を進める4つのポイント

日テレ、アップル、MTV、マクドナルド……と転職を重ねた片岡さん。それぞれ企業規模や業界が異なる会社なだけに、業務内容はもちろん、職場での振る舞いや人間関係にも気を遣っていたそうです。その経験の中で培った、若手社会人に参考にしていただきたい「上手に仕事を進めるためのポイント」を4つ伺いました。

1.かわいがられる力は大事
職場の方々には、かわいがられたほうがチャンスは舞い込みやすいものです。ただし、上司にお世辞を言ったり、周囲に愛想を振りまいたり、わざとふざけて見せたり……仮に上辺だけでかわいがられても持続しませんし、ストレスもたまります。
かわいがられるために心掛けたいのは、やるだけやったら強がらずに本音をさらけ出すことです。ときには弱音を吐いてもいいので、ウソをつかずに虚勢を張らないこと。そして相手にどう思われるかを考えすぎずに、正直に周囲のサポートを求めることです。上司や同僚と上手くつながることで、いつの間にか「目をかけてもらえる人」になれます。

2.できない理由を考えない
「できない理由」を口に出すよりも「頼まれた理由」を先に考えてみると、それが大きなチャンスになります。上司の無茶ブリに、「できない」と考えてしまう人は、時間がない、ほかにやることがある、あまり仕事を増やしたくない、といった考えが背景にあるのだと思います。
ですが、依頼者の気持ちや置かれた状況に思いを巡らせてみてください。なぜ、相手はあなたにその仕事を頼んでいるのか、どのような成果を出せば良いのか。「できない理由」をぐっと飲みこんで、どうしたらできるか、どうしたら60点まで達するのか、といった「できる方法」を考える訓練をすると、自分の潜在能力に気付けるはずです。

3.転職先で最初に仲良くなるべき人は?
新卒社員なら、多少の失敗も大目に見てもらえますが、転職者は即戦力であることが求められます。当然、新しい職場の目は厳しいので、うまく立ち回らなくてはなりません。ポイントは、自分と同じ並びの立場にある同僚たちとの関係を良くすること。ライバル意識を持たれて対立すると、仕事がやりにくくなってしまいます。
次に上司の秘書やアシスタントの立場にある人と仲良くなること。上司が忙しい人であればあるほど、直接連絡を取りにくくなるからです。秘書やアシスタントの人との関係が良好であれば、緊急時に優先的に間を取り持ってくれることもあるでしょう。
最後に、職場で1人でも本音で話をできる人を見つけることです。そのためには、自分から積極的に話しかけましょう。場合によっては自分の弱点を少しさらけ出してみるのもいいでしょう。まずは新しい部署で身近な3人を味方につけることを目指してみてください。

4.時間にルーズな人と付き合ってはダメ
打ち合わせや待ち合わせで毎回相手を待たせる人は、「だらしない人」というレッテルを貼られてしまいます。相手の時間を数分でも奪うことは、相手を軽く見ている証拠。また、相手への想像が働かない人でもあり、仕事で相手にされなくなります。
逆に自分が常に待たされるタイプなら、相手との付き合い方を見直す必要があります。時間にルーズな人とは、あまり関わり合いにならないほうが身のためだからです。

20~30代で身につけたい、キャリアアップのススメ

片岡英彦(かたおか ひでひこ)さん

片岡さんが初めて転職を経験したのは、31歳のときでした。「まだ若かったから、あまり悩まずに済んだ」と語る片岡さんですが、それ相応の希望や不安もあったはず。そこでキャリアアップのために20~30代で身につけたいことを伺いました。

20代でできるようになっておきたいことは?
「20代のときに『あなたは何のプロ?』って聞かれたら、単語ひとつで『何かのプロ』って答えられること。29歳までに見つけられた人は、ハッピーだと思います。営業のプロでもいいし、ほかの誰かと被ってもいい。
高校を卒業して働き始める方は29歳まで11年~12年あるでしょう。大卒の方は約8年。その期間の中で何かのプロと言えるようになっていてほしいですね。たとえばお菓子メーカーに入ったとして、8年間仕事をすれば、その企業の中で自分の得意なものが何かひとつあると思います。それのプロになるのは、すごくシンプルですが難しいことです」

30代ではどうなのでしょうか。
「30代になると、もうひとつの答えが求められます。たとえば相手に『PRのプロです』と言ったとして、もし『それで?』って冷たく言われたとき、ちゃんと説明できるか。何が答えられるかです。
キャリアアップには、『ろ過型』と『ブレンド型』の2パターンがあると思っています。たとえば『私はパティシエのプロです』と言って、『それで?』と言われたときに、『あるグランプリで最優秀賞を取りました。さらに行列のできるお店をやっていて、弟子は10人います』となれば、プロフェッショナルとしてOK。これが、その道一筋の「ろ過型」。ろ過していって不純物がなくなっていくイメージです。
他方の「ブレンド型」は、パティシエであり、さらに何が言えるか。たとえば、パティシエだけど大学で教えていますとか、デパートの陳列のアドバイザーもやっていますとか。パティシエの能力と別の能力を掛け算すると、違う何かが生まれるんです。パティシエかつ空間コーディネーターかつテレビ番組を持っているとなると、日本に何人もいない存在になりますよね。
ぼくの場合はブレンド型。PRのプロで、なおかつNPOで広報をやっていますよ、非営利団体のPR経験もありますよ。ソーシャルメディアのことも分かりますし、マスメディアも分かります。人に教えることもできます。そうやって掛け算していくようにしているんです」

転職を考える人に伝えたいこと

片岡さんは大学で教鞭を執っていることもあり、転職や就職に関する相談を受けることも多いそうです。そんな中、転職しようか迷っている人に対して、決まって言うことがあるといいます。

「嫌いで辞めるくらいなら辞めないほうがいいです。何かやりたいことがあって、そのために転職する、というのが大原則で、嫌だから辞めるというのはお勧めしません。もちろん精神的にどうしてもダメだというときは辞めた方がいいと思いますが。
今の会社を出たいというのも、転職の動機として少なからずあると思います。でもそれを上司に言っても自分の希望する部署に移れるわけではありませんし、むしろ逆効果になりかねません。自分の都合で辞める人は、会社に対して「立つ鳥跡を濁さず」が礼儀。仕事の不平・不満は、現在の職場では決して口に出さないことです。
退職にも2つの種類があり、退職が目的なのか、転職というチャレンジが目的なのか。転職して何をしたいのか、という『What』があり、そのために今の会社に残るのか、別の会社に移るのかを考えるほうが良いでしょう」

転職するか否かを決断する際は、どういった基準で考えるのがよいのでしょうか。

「憧れとか、夢とか、おもしろそうとか、ふわっとした理由で良いと思います。何かにチャレンジしたくて、堂々と仲間たちに送られて辞められる環境をつくることが大事です。たとえば結婚して職場のみんなから祝福されながら仕事を辞められるような環境なら、結婚して何年か経って、タイミングが合えばもう1回戻れる場合もありますよ」

転職はやりたいことにチャレンジするための手段のひとつだと、片岡さんは言います。経験を積んで、自分を進化させていくための手段だと、片岡さんは言います。取材中、片岡さんは尊敬する人物の1人、スティーブ・ジョブズによる、次の言葉を引用しました。
「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎ合わせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです」
もし心からやりたいと思うことがあるのなら、思い切って飛び込んでみるのも手かもしれません。

■プロフィール

片岡英彦(かたおか ひでひこ)さん片岡英彦(かたおか ひでひこ)
1970年 東京都生まれ。戦略PRプロデューサーで、株式会社東京片岡英彦事務所代表取締役、東北芸術工科大学 広報部長/企画構想学科 准教授、働く女性のライフスタイルマガジン『TOKYO WOMAN』の編集長。京都大学卒業後、日本テレビ入社し、報道記者、宣伝プロデューサーとして勤務。後にアップルのコミュニケーションマネージャー、MTVの広報部長、日本マクドナルドのマーケティングPR部長、 mixiの広報・宣伝・プロモーション責任者を経て、片岡英彦事務所(現:株式会社東京片岡英彦事務所)を設立した。また、特定非営利活動法人 世界の医療団の広報マネージャーを勤めるなど、多方面で活躍中のPRのプロフェッショナル。

取材・執筆:上原純(Office Ti+)