転職ノウハウ

声優になりたい人必見!『アルスラーン戦記』主役声優の小林裕介さんに聞く「声優になるための道のり」

小林裕介

日本だけでなく、世界中で人気を集める日本のアニメーション。そんなアニメに魂を吹き込むのが声優のお仕事です。ソニー生命保険が中学生を対象に2017年3月実施した「なりたい職業ランキング」では、声優(歌手・俳優含む)が女子中学生部門で1位を獲得。若い世代を中心に、声優に憧れる人が増えています。

とはいえ、声優になる方法や必要なスキルがわからないという方も多いはず。そこで、今回は『アルスラーン戦記』でアルスラーン役、『Re:ゼロから始める異世界生活』でナツキ・スバル役などを演じ、2017年第11回声優アワードで新人男優賞を受賞した、声優・小林裕介さんにインタビューを行いました。家電メーカーを退職し、憧れの職業である声優となった小林さんの体験談から、声優になるために必要な情報をお届けします。

声優になるための道は3つ

――さっそくですが、声優になるにはどのような方法があるのでしょうか?
「専門学校に入る」「声優養成所に入る」「声優事務所などが主催するオーディションを受ける」の3つがスタンダードな方法です。中にはボイスサンプルとやりたいことを直接事務所に送る人もいますが、僕はそこまではできませんでした(笑)。僕は社会人2年目24歳の時に専門学校に入学して、週1回、仕事の合間に通っていました。レッスンが本格的になるにつれて、仕事をしながら通うのが難しくなってしまい、ならば会社を辞め、声優の勉強に専念しようと決心しました。

――専門学校ではどのようなレッスンを受けたのでしょう?
必ずやっていたのは歌舞伎の「外郎売」。3分、4分くらいの早口言葉のようなもので、これを暗記して全て言えるようにする。活舌・発音を鍛えるためにレッスン前みんなで円陣を組んでやっていました。基本中の基本のトレーニングで声優だけでなく、俳優さんもやっています。
他には、腹式呼吸での発声練習や、エチュードと呼ばれる即興劇など、演技の基礎がメイン。みなさんがイメージされる映像と台本を見ながら、マイクに向かって演技するアフレコの授業は数回程度でした。絵とセリフは合っているけど、心がこもっていない、というのを避けるためだったと思います。

事務所に所属してからが本当のスタート

――専門学校卒業後は現在の事務所に所属して、華やかに声優デビュー?
いえいえ(笑)事務所に入ってからがスタートです。僕が所属するゆーりんプロは、事務所の中で正所属・準所属・ジュニア・預かり所属というランクがあります。最初は預かり所属で、正式なマネジメント対象になるには、事務所内オーディションなどで力を見せていかなければいけません。中には正所属になれず、事務所を去る方もいます。

――事務所に所属しても、すぐアニメの声優の仕事ができなかった?
事務所に入ってから、アニメデビューするまで4年かかりました。その間、来た仕事はナレーションやCMのエキストラ、舞台の仕事です。アニメの仕事がやりたかったのですが、オーディションが年に1回か2回程度。この少ないチャンスを掴み取るために、マネージャーと何度も話し合って、挑んでも不合格ばかり。もう辞めたいと思った回数は両手じゃ足りませんね。好きだったアニメが見られない時期もありました。それでも何とか食らいついて、掴んだ仕事が『ウィッチクラフトワークス』の主役だったんです。

小林さんの演技のポイントは“読解力”にアリ!

――演技をする際に気を付けているポイントはありますか?
物語を読んで、しっかり登場人物の心情を読み解いて表現することです。例えば、怒りという感情の中にも、自分への怒り、相手への怒りなど感情の矛先によって表現の仕方が変わります。また、怒りの感情の中に、同じくらい悲しい気持ちが入っていることもある。そうなると、100%の怒りとは違う演技になります。そうやってキャラクターの気持ちをしっかり読み取って演技しないと、薄っぺらいものになってしまいます。だから、キャラの気持ちを読み取るための“読解力”は日々培っていかなければいけません。

――声優として活動してみて驚いたことってありますか?
顔出しの多さ、ですね。いざデビューするとイベントや動画配信、キャラクターソングを歌うなど人前にでることが多い。顏出すのが嫌だから声優になったのに(笑)。だから実は、僕が一番困ったのは服なんですよ。人に見られるなんて考えていなかったので、よれよれのTシャツにGパンしかなかった。マネージャーに怒られちゃいましたね(笑)。今は声優が人前に出るのは当たり前なので、ちゃんと服と気持ちの準備はしなきゃいけないですよ!

プライベートが演技の幅を広げ、揺るぎない個性に

――「声優になりたい」という方へアドバイスをお願いします。
専門学校・養成所に入って学ぶのは、みんながやること。だからこそ、声優活動以外を充実させてください。例えば、僕は4年間の下積み時代に保険営業のコールセンターと牛丼チェーン店でアルバイトしていました。コールセンターの営業は相手の反応が第一。相手が一歩引いていれば、こちらも一歩引いて「そうですよね~」と声をかける。逆にノリがいい方だったら、自分もノリよく「ですよね~、ところで保険って入っていますか?」と声をかけていました。要するに芝居の掛け合いと同じなんです。牛丼屋のアルバイトでも、接客する時にクールなキャラ、テンションが高いキャラなど使い分けていました。全ては自分の心持ち次第。学校じゃなくても演技は学べるということです。

――なるほど! プライベートも演技の幅を広げるということですね。他に声優業で生きている経験はありますか?
一番は大学時代にやっていた空手です。空手をやっている時は毎日「今日は歯が折れるんじゃないか」「目が潰れるんじゃないか」と覚悟して取り組んでいました。一歩間違えれば大怪我につながりますから。それに比べて声優の仕事は、空手のように危険ではないし、失敗しても死ぬわけじゃない。そう思うと緊張しないですね。これは空手のおかげだと思います。それでも、大御所の声優さんが自分の隣に座っていると緊張しちゃいます(笑)。

あと社会人の経験も役に立ってますね。勤めていた会社は礼儀・作法をしっかりする会社だったので、今でも色んな方に礼儀・作法を褒めていただけます。そういうところを認めてもらえているから、イベントの司会やラジオパーソナリティーを任せてもらえるのかなと思います。

「アニメの主役を演じたい!」という高校生のときに抱いた夢にチャレンジするため、会社を辞めた小林さん。4年間の下積み時代を乗り切る原動力になったことは何だったのでしょう。「アニメの主役を演じることができる声優になる!」という強い気持ちが声優にとって大事な要素なのかもしれません。

■プロフィール
小林裕介(こばやしゆうすけ)
1985年東京都生まれ。ゆーりんプロ所属。大手家電メーカー退職後、声優を志す。『ウィッチクラフトワークス』多華宮仄(たかみやほのか)、『アルスラーン戦記』アルスラーン、『Re:ゼロから始める異世界生活』ナツキ・スバルなど、主役を多数担当。2017年第11回声優アワードで新人男優賞を受賞する。
(取材・執筆:冴島友貴)