コラム

ロシア軍特殊部隊の将校が生み出した訓練法!最強のストレスマネジメント「システマ」がすごい!

大小の違いはあれど、仕事をしているほとんどの人が感じているであろうストレス。厚生労働省の「平成28年 労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、仕事で強いストレスを感じている人は59.5%にものぼります。ストレスを解消するためにお酒を飲んだり、週末に寝だめをしたりしてもさほど効果を感じない……という人も多いのでは?そこで今回は、戦場という究極の環境で生き延びるために考えられたストレスマネジメント術「システマ」を紹介します。公認システマインストラクターでシステマ東京代表の北川貴英さんに、最強のストレスマネジメント術についてお聞きしました。

ロシア軍特殊部隊の将校が生み出した訓練法

数々の内乱、紛争を鎮圧したロシア内務省直属特殊部隊SOBR(ソーブル)。その将校がロシア古来の武術をもとに生み出した訓練法が、いま世界各国で話題になっています。その名は「システマ」。創始者はミカエル・リャブコ氏です。

軍隊式の訓練法というと、「ビリーズ・ブート・キャンプ」みたいな激しい筋トレを思い浮かべるかもしれませんが、システマでやることはまるで正反対。呼吸法とリラクセーションを中心としたワークによって、体の芯から疲れやストレスを抜いていくというのがその手法です。

手前右が「システマ」創始者のミカエル・リャブコ氏

システマとは、弾丸が飛び交い、足元に地雷が埋まっているような超ストレスフルな状況で活用されてきた、ストレスマネジメントのメソッドです。特殊部隊のメソッドなんて、平和な日本に住む私たちにはまるで無関係に思えるかもしれません。でもよくよく考えてみると、私たちと特殊部隊の隊員たちとの間には、意外にも共通点があるのです。

ストレスフルな環境でいまを生きる私たち

たとえば顧客からのクレームや上司からの叱責、大きな責任を伴う仕事などなど。私たちの日常生活に降りかかるプレッシャーやトラブル、災難はいわば弾丸のようなもの。弾丸に当たらないよう、慎重に避けつつ、それでも万が一当たってしまったら被害を最小限にとどめながら、前に進まなくてはいけません。さらに、友人や恋人といった身近な間柄の人でさえ、相手の「地雷」を踏んでしまえば一瞬でその関係が険悪になってしまうなど、人間関係の脆さや、「そんな法律知らなかった!」というような法律面での落とし穴は、地雷そのものなのです。

もちろん、日本では戦場のように物理的な暴力で命を落とすことなどまれです。それでも程度の違いこそあれ、日々ストレスフルな環境で生きているという点では、私たちと特殊部隊は共通しているのではないでしょうか。

システマとは、戦場を生き抜くためのメソッドです。日常生活と戦争の最前線、形は違っても、私たちと特殊部隊それぞれが身を置く「戦場」において、力を与えてくれるのです。

ストレスケアのファーストエイド「ブリージング」

私たちと特殊部隊には、共通点がもうひとつあります。それは「時間がない」ということ。特殊部隊では実にさまざまな訓練を日々こなさなくてはいけません。一方、私たちも少ない時間をやりくりして、日々仕事や家事を回しています。じっくり腰をすえてストレスマネジメントを身につける余裕なんて、なかなか得られないという点も似ています。

システマはそういう状況下でも誰でも手軽に、ある程度の効果が得られるように設計されています。その核となるのが「ブリージング」と呼ばれる呼吸法です。やり方は鼻から息を吸って口からフーっと吐くだけ。口を開いてハーッと吐くのではなく、軽くすぼめてフーっと吐くのがポイントです。腹式呼吸とか胸式呼吸とか、気にする必要はありません。それによって視界が明るくなったり、緊張が和らいだりといった、何らかのポジティブな変化が少しでもあれば、正しくできているということです。あまりにも手軽であっけなく思えるかもしれませんが、これはどんなに時間がない人や、不器用な人でも実践できるよう、極限まで余計なものを省いた結果です。

気持ちが焦ったり、不安を感じたり、あるいは姿勢が曲がったり肩に力が入っているとき、必ず呼吸は速く、浅くなっています。つまり精神と体、そして呼吸は密接にリンクしているのです。だからその一角である呼吸を整えることで、精神と体もまた同時に整えることが可能となります。

とはいえ、呼吸ひとつで人生がひっくり返るようなドラスティックな変化が起こるわけではありません。気のせいにしてしまいそうな、ささやかな変化です。でもブリージングをすれば、その変化は必ず起こります。こうした小さな変化の積み重ねが、大きな変化となるのです。

「スローエクササイズ」で体も心も芯から強くなる

ずっしりのしかかる重たいストレス。これを軽くしてしまう方法があります。一言でいうなら「強くなる」こと。体と心が強くなれば、同じ悩みやストレスでも不思議と軽く感じられてくるものです。重い荷物でも体が強くなれば、軽く感じられるのと同じです。でもただ筋トレをして筋力をつければよいというものでもありません。体も心も芯から強くなるような強さ。それこそが自信をもたらし、ストレス耐性の向上につながります。そんな強さが手軽に手に入るような都合のよいトレーニングがシステマにはあります。それが「スローエクササイズ」です。

「フッフッフッ!」と呼吸しながら、ゆっくり時間をかけて腕立てをする

やり方は簡単です。通常の腕立て伏せやスクワットを、ゆっくりやるというもの。「ゆっくりやる」というのは、体を上下させる1回の動作をできるだけ長い時間をかけて行うということです。途中で辛いところもあるかもしれませんが、頑張って一定のスピードを保ちます。腕や肩に強い負荷がかかりますが、「フッフッフッ!」と連続してブリージングしたり、体を揺すったりして全身に散らすようにしてください。

最初のうちは片道10秒、往復でもほんの20秒で筋肉がパンパンになるでしょう。勢いでごまかすことなく、あえてゆっくりじわじわとした負荷をかけることで、ストレスと真正面から向き合うことができます。その効果は筋肉だけでなく、神経に及び、自律神経や中枢神経などを通じて体全体が負荷に耐えられるように適応していくのです。

「脈を感じる」ことで得られる深い休息

1日を終えて、ようやくベッドに身を横たえてもなんとなく眠れない。そんなこともあるでしょう。パソコンやスマホが普及し、目ばかりが酷使されれば神経が興奮してしまうもの。そのせいで睡眠時間が削られてしまえば翌日のパフォーマンスまで落ちてしまいかねません。こうしたときは頑張って寝ようとするよりも、ちょっとしたテクニックを加えれば休息の効果をぐっと高めることができます。

呼吸は細く、長く、静かに。全身の脈を感じとる

それは「脈を感じる」というもの。心臓のポンプ作用で送り出された血液は動脈を経由して全身の毛細血管へと流れていきます。その血液を通じて全身に伝わっている拍動を全身で感じとるようにするのです。どこかの体の部位で脈が感じとれたら、他の部位でも同じように感じとれるようにしていきます。呼吸は細く、長く、静かに行うようにしてください。はじめのうちは上手くできないかもしれませんが、気にすることはありません。微細な振動を感じようと意識を研ぎ澄ませることそのものが、神経をリラックスさせ、深い休息をもたらすのです。「なかなか脈が感じられないなぁ」なんて思っているうちに、いつしか眠りに落ちてしまうでしょう。

まとめ

システマにおける最優先事項は、「サバイブ(生き延びること)」です。これはただ「命を保つ」ということだけでなく、生き生きとよりよく生きることをも意味します。戦場が生んだシステマの知恵は、みなさんの日々のストレスマネジメントにもきっと役立ち、クオリティ・オブ・ライフを高める助けとなるはずです。

【執筆者プロフィール】

記事執筆:北川貴英
公認システマインストラクター システマ東京代表。
2008年モスクワにて創始者ミカエル・リャブコより公式システマインストラクターとして認可される。首都圏を中心に年間400クラス以上を指導するほか、教育機関、医療系シンポジウムなどでの講演も行う。著書は「ストレスに負けない最高の呼吸術(M-on)」「最強の呼吸法(マガジンハウス)」「システマ入門」ほか多数。
システマ東京URL https://www.systematokyo.com/