職種・業種ガイド

東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集始まる。誰もが歴史的瞬間に立ち会えるチャンス!

ロンドン大会の東アジア言語チーム。中央の男性が西川さん(西川さん提供)

「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」(オリンピック開催期間:2020年7月24日~8月9日、パラリンピック開催期間:2020年8月25日~9月6日)が約2年後に迫りました。オリンピック・パラリンピックといえば、4年に1度開催される世界最大のスポーツイベント。この貴重な機会をぜひ運営側で体験してみたいというボランティア希望者が増えています。そこで2018年6月11日に大会組織委員会から発表された募集要項を踏まえ、過去の大会で数多くのボランティアにインタビューしてきたスポーツライターの高樹ミナさんに、オリンピックボランティアの仕事とその魅力をうかがいました。ボランティア経験者の話は必読です!

9分野で8万人!募集開始は2018年9月中旬

2020年東京オリンピック・パラリンピックのボランティアは、9分野の職種に計8万人を募集することが発表されました。ちなみに東京都(※)も別途3万人を募集しますから、東京大会には計11万人のボランティアが参加することになります。

募集受付期間は2018年9月中旬~12月上旬にかけて。2019年2月頃から説明会や面談を行い、2019年9月までには採用が決まるといいます。気になる各職種の主な業務内容と募集人員(目安)は次のとおりです。

<案内>:会場、空港、ホテルなどでの案内や保安検査(1万6000~2万5000人)
<競技>:競技・練習会場内での運営支援(1万5000~1万7000人)
<移動サポート>:関係者の会場移動車の運転(1万~1万4000人)
<アテンド>:海外要人の接遇、選手の通訳など(8000~1万2000人)
<運営サポート>:身分証明書発行、物品貸し出しなど(8000~1万人)
<ヘルスケア>:急病、ケガの初期対応やドーピング検査支援(4000~6000人)
<テクノロジー>:通信機器の貸し出し、会場内での競技結果入力(2000~4000人)
<メディア>:報道機関の取材支援。記録写真や動画の編集支援(2000~4000人)
<式典>:表彰式での選手案内、メダル運搬などの支援(1000~2000人)

※東京都
<各種案内や大会情報提供>:羽田空港、東京駅などの主要駅、観光地での交通、買い物、競技の情報提供など(2万人を募集。これに2019年ラグビーW杯などでのボランティア経験者1万人を追加し計3万人)
◆東京2020大会のボランティア活動詳細
(https://tokyo2020.org/jp/get-involved/volunteer/about/)

無償でも参加!対価は経験そのもの

ボランティア参加に関してはさまざまな意見があるようです。そのひとつが労力に対する対価について。一部には「やりがい搾取では?」というような声もあるようですが、そもそもボランティア活動は無償が基本で、過去の大会で取材したボランティアの皆さんも自宅が他県もしくは他国の場合、大会開催地までの交通費や宿泊費などは自己負担でした。ただし、大会期間中の食事や会場間の移動にかかる交通費、ユニフォームなどは支給され、特にボランティアにしか手に入らないユニフォーム(ウエア、シューズ、バッグ他)は活動の記念として一生の宝物になっています。

そして、彼らにとって何よりもの財産はボランティア活動を通じて得た経験そのもの。2012年ロンドン大会をきっかけに2014年ソチ冬季大会、2016年リオ大会に通訳ボランティアとして参加した西川千春さん(58)もそのひとりです。自称「オリンピック中毒者」という西川さんは、つい最近まで30年近く暮らした英国ロンドンでオリンピック・パラリンピックを迎え、競技大会の熱狂と激変する街の様子を目の当たりにしたといいます。さらにボランティアとして直接大会運営に携わったことで、「すっかりオリンピックボランティアにハマった中年オヤジ」と自嘲します。

歴史的瞬間に立ち会える「人生最高の2週間」

西川さんを虜にしたオリンピックボランティアの魅力とは一体何なのでしょう?まず挙げられるのは、「普通ではできない経験を自分の意思でできる」という点です。子どもの頃からスポーツが大好きで、自身も中学・高校時代は卓球部にいたという西川さんは、2012年のロンドン大会で団体銀メダルに輝いた卓球女子日本代表選手のインタビュー通訳を担当し、その興奮と感動を肌で感じたそうです。

「涙する選手たちの姿を間近に見て思わずもらい泣きしてしまいました。一般人である私がそうした歴史的瞬間に立ち会えたのもオリンピックボランティアに参加したおかげです」と西川さん。このときの経験を「人生最高の2週間」と位置付け、以降スポーツボランティアの普及活動に力を入れるようになり、日本でも大学や企業、地方自治体での講演会を引き受けたり、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のボランティア検討委員会委員として準備に携わったり、ついには今年6月、『東京オリンピックのボランティアになりたい人が読む本』(イカロス出版)
(http://secure.ikaros.jp/sales/list.php?srhm=0&tidx=39&Page=1&ID=4212)という、書籍の出版にまで至りました。オリンピックボランティアの経験は人生最高であると同時に「人生を変えた大きな出来事」と西川さんは言います。

その後の人生に影響を与える大会ボランティア経験

リオ大会のチケット売り場。炎天下でのボランティアも楽しみながら(高樹さん提供)

取材をしていると、他にもオリンピックボランティアを契機に人生が変わったという人が少なくないことに驚きます。たとえば英会話ビジネスで起業している女性は2016年リオ大会のボランティア活動を通じてネットワークを広げ、ビジネスを拡大するとともに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の一員に加わりました。またリオオリンピックとパラリンピックの両方でボランティアをした大学生の女性は初めて見たパラリンピックに興味を持ち、大学のゼミでパラスポーツの魅力を伝えるシンポジウムを開くなど、ボランティア経験を学業や就職活動に活かしています。

また、最初は見ず知らずの者同士が同じチームで苦楽を共にすると、年齢や国籍を超えて一生の友達になるとも聞きます。そんな彼らが一様に言うのは「お金のためじゃない。楽しいからやっている」ということ。確かにリオ大会で出会った地元女性は炎天下での仕事にもかかわらず、「毎日がエキサイティング。何よりも『ありがとう』と言われるのがうれしい」と顔をほころばせ、手に障害のある男性ボランティアは「障害があってもできる仕事はあるよ。いろんな国の人と出会えるのも楽しいね」と教えてくれました。

自分ができそうなことでいい!

ボランティアに参加する動機は人それぞれ。中には言語や体力にちょっぴり自信がなくて参加を迷っているという人もいるでしょう。でも、ボランティアの仕事は細かく分けると数千種類にものぼるといわれますから、適した職種がきっとあるはず。まずは肩の力を抜いて、自分にできそうなことやどんな役割を担いたいかを考え、自分なりの目的を持ってオリンピックボランティアにトライしてみてはいかがでしょう。


記事監修:高樹ミナ(たかぎ みな)
スポーツライター。00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も活かし、オリンピック・パラリンピックの魅力と意義を伝える。卓球、パラ競技の取材執筆を中心にTV、ラジオ、講演等にも出演。『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)、『美宇は、みう。』(平野真理子著/健康ジャーナル社)、『卓球メンタル強化メソッド』(平野早矢香著/実業之日本社)構成・編集協力他。