職種・業種ガイド

仕事のB面<超人気ヘッドスパ・セラピスト編>磯貝麻里さん 日本一予約が取れないお店「悟空のきもち」セラピストの世界

注目されているあの仕事、楽しそうに見えるこの仕事、本当のトコロはどうなのか気になりますね。そこでこの「仕事のB面」シリーズでは、普段あまり知る機会のない人気職業の裏側を、現役ワーカーに紹介してもらいます。
1回目は超人気ヘッドスパ「悟空のきもち」で活躍するセラピスト・磯貝麻里さんに登場していただきましょう。どうやって今の仕事に就いたの?セラピストの仕事のおもしろさや苦労とは?日本一予約が取れない超人気店で活躍し続けるためにはどんな努力が必要?などなど……。本当のトコロを語っていただきました。

テレビを見て抱いた「私もああなりたい!」という強い思い

「悟空のきもち」は、東京と関西で4店舗を展開する“頭のほぐし”専門店です。2008年に京都で創業して以来、ご好評をいただき、2018年6月現在、約30万人のお客さまに予約待ちしていただいています。

人気の理由は、当店代表が考案したドライヘッドスパの「絶頂睡眠」の手技。その心地よさから、ほとんどのお客さまが施術開始10分ほどで “寝落ち”してしまうほど。これが話題となり、今では予約が取れたからと、わざわざ海外からお越しになる外国人のお客さまもいるほどです。

そんな「悟空のきもち」を私が知ったのは、2017年の春。テレビで俳優さんが施術を受けている様子を見て、もう、びっくり。当時、私は地元の岐阜にある大手リラクゼーションショップで、セラピストとして働いていました。そのお店も人気店だったのですが、「悟空のきもち」の予約待ちは15万人(当時)。すごい世界があるぞ、と。何より、テレビで有名な俳優さんに施術していたセラピストの方が、キラキラして見えた。「私もああなりたい!」と、テレビを見た直後にホームページから求人登録をしました。幸い、すぐに募集があって採用となったので、秋口には上京してトレーニングを開始しました。

「悟空のきもち」のトレーニングには、「これを受ければOK」というマニュアルがありません。その人が一定水準の技術を身につけるまで、何か月でもトレーニングを続けます。資格や経験がない人でも応募できるので、本当にいろいろな人が全国から来ていて、一般企業のキャリアウーマンだったという人もいます。

「悟空のきもち」はこんな職場

上京して1か月半ほどのトレーニング期間を経て、正式に「悟空のきもち」で働き始めたのが昨年の秋。それから今まで、何度もメディア対応を経験しました。入社して2か月でWeb媒体の取材を受けたり、テレビカメラの前で施術したこともあります。当社オリジナルの「熟睡用たわし」の開発にも参加して、入社3か月で採用側として面接も担当しました。

「悟空のきもち」には人事や商品開発などの部署がなく、全員がセラピストです。なので「やりたい」と手を挙げたら、何でもできる。この会社のおもしろいところです。創業当時から働いているスタッフもいますが、いろんなチャンスがあるので、飽きずに続けられるんでしょうね。忙しいけれど、変化があって毎日があっという間ですから。

また、「悟空のきもち」にはノルマがなく、指名制でもないので、シフトを自由に組むことができます。たとえば、月の半分近くを1日10時間働いて、13連休を取ることも可能。だから、ミュージシャンになるという夢を追いながら働いている、なんて人もいるんですよ。

自分が疲れないようにすることも大事

「1日に何人も施術して疲れない?」と聞かれることがありますが、体力的にも精神的にも、それほどハードだとは感じません。施術は座って行うし、集中し過ぎると手に力が入ってお客さまがリラックスできないので、ときどき他のことに意識を向けるようにもしています。入ったばかりのセラピストが、肩や腕が疲れると言うことがありますが、それは余計な力が入っていたり姿勢が正しくなかったりするからだと思います。慣れたら大丈夫。

とはいえ、1日10時間も施術をすると、やっぱりそれなりに疲労はたまります。私は疲れたら大好きな生ハムを食べる(笑)。私の元気の源は、食べることです。そういうセラピストは多くて、「悟空に入ったら太った」という声もよく聞きます。「悟空」は休みが自由設計なので旅行にもよく行きます。旅行先でマッサージを受けることもありますが、今はセラピストさんの動きが気になって、あんまりリラックスできていないかもしれませんね(笑)。

人を癒したい気持ちと、成長への意欲で「苦労」を乗り越える

今までに苦労したことを挙げるなら、やっぱりトレーニングでしょうか。人間の体はひとりひとり違うので、「ここから何センチの場所を何秒押す」と数字で教わっても、役に立たないのです。自分で感覚をつかむことが大事。「悟空のきもち」の手技は、頭筋膜という薄い膜だけを扱って、「絶頂」の心地よさを感じていただかなくてはいけません。丁寧に教えてはもらえますが、具体的なことは自分で考えて感覚をつかまないとダメなんです。それが難しかった。

今もまだ勉強中です。施術後「もっと早く“寝落ち”してもらえたはずなのに」と、悔しくなることも多い。でも、満足できないから「次はもっと早く寝てもらう!」とやる気がわく。これもこの仕事の楽しさです。

セラピストに必要なものとは

セラピストに必要なのは、何より「相手のために何かしてあげたい」という気持ちだと思います。私たちは手で直接お客さまに触れるので、その気持ちは手を通して、絶対にお客さまに伝わります。それから、強いハートも大事。「悟空のきもち」には3年待ちのお客さまが来られます。そのお客さまに満足していただかなくてはいけないのだから、当然ハードルは上がります。そのプレッシャーを乗り越えるだけのハートを持っていないと。

それに、自分がどうなりたいのか、目標をはっきり持つことも大事です。明確な目標があることで、毎日施術する中で自分に足りないものを見つけ、スキルアップに活かすこともできるし、面接やメディア対応など施術以外の経験も、自分の糧にできると思うんです。

まとめ

自身の目標は「いくつになってもキラキラしていること。自分のしたいことに向かって進み続けることで、いつまでも輝いていられると思う」と話す磯貝さん。そのためにも、もっといろいろなことにチャレンジしたいと意欲的です。この意欲が、人気店を支えているのですね。

プロフィール
磯貝麻里さん
「悟空のきもち」セラピスト。23歳、岐阜県出身。高校卒業後、アパレル関連企業勤務を経て、20歳で大手リラクゼーション企業に転職。トレーニングを経てセラピストとして勤務。22歳のとき、テレビで「悟空のきもち」を知り、すぐにサイトから求人登録する。夏に募集があり、1か月半のトレーニングの後、正式採用。セラピストとして施術にあたる一方で、マスコミ対応や商品開発・面接官にも積極的に挑戦。経験を積んでいる。

(取材・執筆:松田慶子)